Memory

□今ある奇跡
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今日は、早起きできた。ラレスを起こさないようにベッドから出る。ふと、床を見たけれど、バクラの布団が畳まれていた。もう起きてるの?
リビングに行って、キッチンの方を見ると、バクラが料理をしようとしているように見えた。
「あ、おはよー、了」
「おはよう………。早いね」
「何か、目が覚めちまって。で、朝飯作ってやろうと思ってさ。簡単なもんで良いか?」
「………作れる?と、言うより、現代の物、使える?」
「多少は大丈夫だ。テレビで学んだからな」
そっか。バクラ、暇があったらテレビ見て、何かいろいろメモしてたっけ。
案外努力家なんだよね。
「了はソファーで座って、テレビでも見ててくれ」
「……………そうだね、そうするよ」
楽しみだし。待ってるのも、たまには良いよね。
ソファーに座って、テレビをつけた。まあ、朝だから、ニュースぐらいしか、やってないけど。あ、天気予報。………今日も33℃以上、か。どうしてこんなに暑いんだろう、日本は。温暖な気候のはずなのに………。エジプトに、引っ越そうかな。そこなら、バクラだって住みやすいし。………………駄目だ、ラレスの記憶が、戻ってしまうかもしれない。それだけは、避けなきゃ。

僕はぼーっとテレビを見つめていた。
「了?」
「え?何?」
「あ、さっきから呼んでるんだけど、返事が無くて……」
「ごめん!ちょっと、考え事を………」
「そう、か。あ、飯出来たぜ」
「ありがとう。なら、ラレスを起こしてくるよ」
「おう」
今日は珍しく、まだ寝てる。疲れてるのかな………………。

僕は自分の部屋に入り、まだ寝ているラレスを、揺さぶって起こした。
「起きてー、朝だよ」
「う………。了」
「おはよう」
「………………おはよう………」
寝ぼけてるのかな?目を擦って、ボーっとしている。あの耳のような髪型が、ぴょんって動いた気がした。面白いな〜。
「さ、朝ごはん出来てるよ?」
「おう………」
ベッドから出て、大きい欠伸をして。
バクラ………………。あラレスか。
「?あれ、バクラは?」
「バクラが、朝ごはん作ってくれたんだ」
「あいつが………。あいつに、現代の物の使い方が、分かったのか?」
「うん、分かったみたい」
「………人って、すごいな」
「だね」
さ、早くご飯食べよう!お腹空いたし。


「おせーぞ、ラレス」
「うるせぇ………。それにしても、まさかお前が朝飯を作るとはな」
「俺様だってこれぐらいなら、出来るさ」
そう言ってバクラはテーブルに並べられた朝ごはんを指差していた。パンに目玉焼きと焼いたハム。それにサラダ。
「ふん、それなら俺だって出来るぜ」
「ほーう」
「ちょっ、ちょっと!朝からケンカしないで!」
何だか、前にもこう言った事があった気が………。
そして三人で朝ごはんを食べる。

「あ、そうだ。ねえ二人とも、今日良かったら、買い物に行ってくれない?」
「俺と、こいつで、か?」
「うん。バクラには買い物の仕方とか、覚えてもらわないと」
「そう、だな………。俺様、盗む事しか知らねーからな」
バクラ………。
「お金と買って来てもらいたい物は、後で渡すから」
「おう分かったぜ」
その間に僕は、………。

食べ終わり、洗い物は、僕とラレスでやる。バクラはテレビを見ている。
「なあ、どうして俺とアイツで買い物に行かなきゃいけねーんだ?」
「………嫌だ?」
「嫌だ。俺は了と一緒に居たい」
「ラレス………」
何だか、心苦しくなって行く。本当は、僕と一緒に行った方が良いのかもしれない。けど、僕だって予定があるんだ。
「ごめん、今日は、一人になりたいんだ……………」
「………………そうか」
洗い終わって、ラレスは着替えに部屋に戻った。バクラは、もう仕度出来ているらしく。
僕はメモ用紙買って来てもらいたい物を書いて、五千円と一緒にバクラに渡した。
「はいこれ。余分な物は、あまり買わないでよ?」
「ああ、分かってる」
さて、僕は、………。



「じゃ、行って来るぜ」
「行ってらっしゃい」
二人が出て行くのを見送って。

僕は、色々考えたいんだ。
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