Memory

□悔やむ思い
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俺が了から聞かされた事は、俺の記憶を、蘇らせた。

「ラ、レス………?」
「おい、大丈夫かよ」
俺はその場で頭を押さえて、しゃがみ込んだ。

いってぇんだよ、頭が。
徐々に蘇る記憶。


俺が大邪神ゾーク・ネクロファデスの魂の一部だって事も。
人間じゃねえって事も。
ただの、一部でしかねーんだ。
俺は復活のためだけに生み出された存在。それしか意味を持たない存在。
もう奴の本体も無ければ、千年アイテムさえ無い。


「宿主………」
「バ、クラ………!」
「………(戻っちまったか)」
「………何故、何故俺様が、まだ生きているんだ……。こんな、何も無い世界に」
「えっ………」
「だってそうだろ?こんな意味の無い世界に居て、どうしろって言うんだ。………千年アイテムもねえ、ファラオも居ねえ。ゾークの本体も無ければ、クル・エルナ村の地下神殿さえ存在しねえ。………今の俺様に、生きる意味なんて」
そう言いかけた時だった。
「馬鹿!」
「何だと!?」
「聞いてなかったの!?僕が、………彼に言った事を。聞いてたでしょ!?」
………ああ、あの時か。
こいつがここに来て、今の自分には意味がねえって、言ってたっけ。
空しいな。俺様も、結局は“こいつ”何だよな。
「聞いてたさ」
「なら………!」
「……俺様は、人間じゃねーんだぞ。それに、世界を滅ぼそうとした奴の一部だぞ。………………」
「だから何だって言うんだ!君がたとえ人間でなくても。……………その姿で、僕と瓜二つの顔で、倒れていた。きっとそれには意味があるんだよ」
「ほう、それは一体どんな意味だよ」
「それは………」
「………………お前、元は千年リング宿っていた存在だろ?」
そこでバクラ、が口を開いた。
「俺様、遊戯から聞いたぜ?千年アイテムには、願いを叶える能力があるって。………きっとお前がその姿で倒れていたのは、了の願いで生まれたんじゃねーのか?」
「宿主の、願い………」

俺様はそれを知っている。
初めの願い、それは、

“僕を一人にしないで”

そして、改めて願い直した願い

“バクラと言う人格を現実に出したい。二人でずっと一緒に居たい。いつまでも、一緒に居たい”

確か、そう願っていた。
まさかそれが現実に………?


「心当たりあんだろ?」
「………」
「もう良いじゃねえか。今更」
「………………」
「さて了、一緒にデュエルしようぜ」
「………そう、だね」
二人は俺様から離れる様にリビングの方に行った。
俺様は宿主の部屋に行くしかねえか。




ドアを閉めて、薄暗くなった部屋の中で、俺様は倒れる様にその場に座り込んだ。

宿主の願い、か。
それが叶って、今の俺様が居る、か。
皮肉なもんだな。

消えたかったのによ。

遊戯みたいに、宿主から離れておけば………。


これから、いつも通りに、生きて行けば、良いのか?







獏良目線になります。

バクラとのデュエルは、そんなに楽しくなかった。
「了………?泣いてるのか?」
「え………」
僕はいつの間にか、泣いていた。
「………………こっちに来い。デュエルなんか、いつでも出来る」
「………」
僕はそっとバクラに抱き着いて、泣いた。
辛いんだ。
彼の記憶が戻ってしまって。
けど、言わなければならない事。
分かっていたんだ、けど………。

やっぱり、無理だよ………。
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