Memory

□君のぬくもりを知ってから
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バクラ………いや、ラレスの記憶が戻って、一日が経過した。
疲れているんだろうね、まだ彼は寝ている。
僕は彼を起こさない様に、ゆっくりとベッドから出て、リビングに向かった。今日はバクラもまだ起きていない。良かった。これなら僕が二人の朝食を作ってあげられるね!


と、思ったけど、全然お腹が減らなければ、何もしたくない。何も考えたくない。
ただ、脱力感。
何もしたくないし、考えたくもない。
久々に、疲れた。

昨日は、沢山の事が起きた。だから、かな?

これで、良かったんだよね………。


「了?」
「あれ、バクラ。おはよう」
「おはよう………。また、泣いてたのか?」
「え?そんな訳ないよ」
「けど、目が赤いぜ?」
また、泣いていたのかな………。
「バクラぁぁ………」
「了………」
僕は、彼に抱き着いて泣いた。また、泣いてしまった。
泣きたくないのに………………。
「………お前は優しいな」
「えっ………」
「だってそうだろ?その涙は、アイツ……ラレスのための涙だろ?」
「ぅぅ………」
「……大丈夫。俺様も居るんだ。お前が一人になる事は決してねーさ」

どうして君は、こんなに優しいの?
ねえ、どうして………。

「………………(ラレス、てめえは愛されてるんだな。了から、とても。………けど、お前はそれに気付いているのか?)」
「ねえバクラ。そろそろラレスが起きてくると思うんだ。………朝ごはん、一緒に作ろう?」
「ん?あー、そうだな。作るか。………平気か?」
「………僕なら大丈夫。君が居るし」
「そっか」
にこってしてくれて、僕をもう一度強く抱き締めてから、一緒にキッチンに向かった。








それからしばらくしてラレスが起きてきて、一緒に朝ごはんを食べて。他愛のない会話を交わして。

さて、今日は何処かに行こうかな?
気晴らしに。


「ねえ二人とも。今日何処かに出掛けない?」
「俺様は良いぜ」
「………宿主に任せる」
「うん、分かった」
うーん、今の時間………10時だしな〜。何処に行こうかな………。
あ!
「買い物に行く?電車に乗って、いつもとは違う、少し遠い所に」
「まあ、了が良いなら、俺様はただついて行くだけ、だぜ」
「………」
「ラレスは嫌だ?」
「別に、何でも………」
「じゃ決まり!二人とも、早く着替えて来て」
僕は二人の背中を押して、部屋に行かせた。

その間に僕は………………。
洗い物をして、洗濯物を干しちゃって………。




「宿主。後はお前だけだぜ」
「あ、うん」
僕がちょうど洗濯物を干し終わったぐらいに、ラレスが呼びに来た。
「てか、何処まで行くんだ?」
「ん?渋谷ー?」
「………何故俺に疑問系で聞いてくる」
「だって、何処でもいいし。………たまには、遠くに買い物だって、良いでしょ」
「まあ、……」
「………………………僕、着替えてくる」
「おう………」
はぁー。僕、嫌な奴だよね………。


さて、着替えたし。日焼け止めも沢山塗ったし。持つべき物は持ったし。後は………。
「………千年リングの代わり、か」
この間見つけたネックレス。何だか悲しくて、それを買ったんだっけ。ロケットペンダント式の。
そこには、まだ何も入ってない。そのうち、三人で写真を撮るよ。


「さ、二人とも、行こう?」
「おう」
「ったく、面倒だな」
とか言いながら、一番行きたそうだよ?ラレス。

先にラレスを外に出して、次にバクラを出そうと思ったら、バクラは僕を先に出した。そして鍵を閉めてくれるバクラ。ラレスは先に行っちゃうけど、バクラは僕と一緒に居てくれて。僕の肩を、さり気無く触れていた。

その優しさが、僕の胸を貫いた。

僕は、君のぬくもりを、知ってしまった。



「おい、足遅くねーか?俺様、先に行っちまうぞー」
「あ、待ってよ!」
僕は走って、ラレスを追いかけた。
「………了。俺は………………」
後ろで僕を呼んだ気がした。気のせいかな?





END

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