Memory

□造りたい
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僕は朝、二人より遅く起きた。ちょっと考え事をしていたら、部屋から出られなくなっていたから。


「ねえ二人とも。僕の話を聞いてくれる?」
「どうした了?」
「宿主?」
「あのね………、千年リングを、造りたいんだ」
「「………は?」」

そう。
ずっとそれについて、考えていたんだ。
だって、造りたいんだ。
寂しいんだよ、首元が。

「ねえ、良いよな?」
「ふざけんな………」
「ラレス………」
「そんなもん、要らねーよ!必要ねーだろ!」
確かに、必要はないのかもしれない。けど、僕は、必要がある。
「俺様は、別に良いぜ?」
バクラは、理解してくれた。けど、やっぱりラレスは………。
「っ………。勝手にしろ!」
そう言ってラレスは家を飛び出して行った。
「………………どうしてそこまであいつは、怒るんだろうな。別に、犠牲が出る訳じゃねえ。誰も失う事はねーってのにな」
「うん………」
「気にすんなって。造るんだろう?材料はあるのか?」
「無い、から、今から買いに行こう?」
「ああ」
バクラは全然優しい。どうしてだろう………?
ま、いっか。

ラレス、君は何処に行ったの………………?







※ラレス目線となります。




ったく、宿主の野郎、遂に頭がイカれたんじゃねーのか?千年リングを作るなんて………。

つい、かっとなっちまって、家を飛び出しちまった。

すまねえ、宿主。


「あれ、バクラ君?」
「あん?………遊戯」
街で出会ったのは、遊戯だった。どうやら今日は、一人のようだ。
「珍しいな、お前が一人とは」
「まあ、ね。今日はちょっと、ここに用があって」
「あ?」
遊戯が見上げた先。そこには、『古代エジプト展』と書かれた看板があった。
「また、やってんのか?」
「うん。けど、大分違うんだよ。………もうあの石板はないし。………もう一人の僕」
遊戯の瞳が、濁っているように見えた。泣きたいのか………。
「………ここに行けば、俺もバクラ(アイツ)も、元の世界に帰れるのかもな………」
「え?………駄目だよ、バクラ君!」
「何故だ!お前は宿主の事が憎くねーのか?俺様たちだけこうして戻って来て………。そして宿主の所に居て、宿主だけが幸せになっていることを」
「そりゃ、やっぱり羨ましいって思う事はあるよ?………けど、約束したし。まあ、やっぱり戻って来て欲しいとは、今でも時々思うよ………」
「遊戯………」
それ以上、俺様が掛けてやる言葉なんて、見つからなかった。
「さて、僕は行ってくるよ」
「行って、どうするんだ?」
「………何か、そこにもう一人の僕が居るような気がして。まあ居ないけどね。………この虚しさを、どうにかしたいんだ」
「………………」
「じゃあねバクラ君。あ、えと、了君に寂しい思いをさせちゃ駄目だよ!」
そう言って遊戯は、古代エジプト展の方へと行ってしまった。

遊戯、お前は誰よりも強いぜ。

宿主も、それを見習ってくれれば………。
もう少し、街を散歩したら、帰るか。
それに、宿主に相談してみよう。古代エジプト展に行こうって。
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