月花物語
□三、千鶴
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適当に割り振られた、人通りの少なそうな位置にある部屋に和音が住まうようになって二週間が経っていた。
その間は特に何があったでもなく、と言っても和音がただひたすら部屋に籠りっきりだったため何も知らなかっただけなのだが、まあ普通に平和に生きていた。
たまに沖田が意地悪言いに来たり、近藤が菓子を運んでくれたり、原田が暇潰しに付き合ってくれていたりしただけで、本当、何も無かった。
が、その知らせは特にこれといった前触れもなく耳に入る。
「そういえば、お前、まだ知らなかったよな」
「ん?なにかあったのか?」
「ああ、まあな」
原田の口から、特別な理由で新選組に関わった少女の話が出た。
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昨日の晩、女の子がもう一人、ここに居候することになったらしい。
まあ、話はそれだけで、そこから先は何やら言いにくそうにしていたので。
和音も空気を読んで、深くは追及しない。
「そうか」
それだけ返した。
その女の子が、これから自分の未来に深く影響するなんて思ってなかった。
全然、思ってなかった。