月花物語

□三、千鶴
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千鶴と会ったのは、それから三日後だった。





「……?」


見知らない顔が朝食の後片付けをしていて、最初は不審者かと思ったが、不審者が幹部の使った食器を運んでいるはずもないのでその考えを消去する。

そこで、ちょうど上手い具合に原田との会話を思い出した。




「おい」
「は、はいっ」



『びっくり』された。

文字通り、まさに『びっくり』という音が聞こえてきそうなほど、可愛らしく驚いていた。

その声で、この声はまず間違いなく女子のものだと再確認する。



「お前、ここの居候か?」
「あ、は、はいっ」



善から手を離さずに声だけで答える。すぐに一段落つけて和音を振り返り、目を見開いた。……まあ、致し方ない反応ではあるだろう。


何故子供がこんなところに居るのかと、不思議に思ってもおかしくはない。







「……あの、八木さんのところのお子さん、かな?えと、」
「いや、私はここに居候してるんだ。土方から聞いてないのか?」
「え」









まあ、もちろん驚かれはしたが。
ことここに至る理由を話せば、千鶴は意外とすんなり話を受け止めてくれた。







「春原和音だ。よろしくな」
「えと、千鶴です。雪村千鶴」
「……」




……雪村?












「あ、私、雪村綱道の娘なんです。ご存知、ですよね?父のこと」
「…………いや、知らない。ここに来て私も日が浅いんだ」
「あ……。そうなんですか……」













そうか綱道の。
綱道の、娘か。





そのワリには、普通に良い子そうだな……。












「うん。千鶴、その敬語やめろ」
「へ?」
「年の近い女子に敬語なんて使われたら変な気分だ。普通に話せ。フレンドリーに」
「ふ、ふれ?」
「親しくって意味。よく覚えてないんだけど、小さい頃に聞いたことのある言葉なんだ」
「へ、へえ」
「だから、仲良くしような、千鶴っ」
「は、はい。あ、うんっ!よろしくね和音ちゃん」
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