AMNESIA
□与えるならばA
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あの日から俺はマイとは会っていない
メールや電話がまめにくるけど、どうしても返信をすることが出来ない。
「子供くさかったな・・」
今更ながらに反省する。
だけど、それを素直に認めて相手に謝罪できる
ほど大人にもなっていなかった。
あと3日・・
同じバイトのイッキさんからは
留学は1年の予定で、そんなに長引かないことも知った。
1年じゃないか。
そう頭では判断している。
だけどマイに会えなかったこの2週間ほどの間、どれほど時間の流れが遅かったのかと表現できない。
♪〜♪♪
携帯の着信音が部屋に鳴り響く。
それはひどく聞きなれたものだった。
「もしもし」
「あ、シン。出てくれたぁ」
明らかにホッとしている声の持ち主は間違えようもなくマイであった。
「あと2回電話して出なかったら家に行こうと思ってたよ」
クスクスと笑うマイの声が甘くこだまする。
「で、何?」
「空港の時間言ってなかったなぁと思って
午前の11時の飛行機に乗るんだ。
10時に空港に来てねっ」
「・・・わかった」
「うん!! ・・待ってるから」
やはり俺も俺だ。
どんなに明るくしていても、こいつの気持ちはわかるわけで。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
思ったよりも早めに家を出る。
10時に空港に来いと言っていたが、9時にはもう家を出ていた。
手には持ちなれないぬいぐるみがある。
(あいつ、こういうの好きだったよな)