CLOCK ZERO

□午後の日
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「撫子、お願いがあるんだけど」

そう言って私の部屋に入ってきた子の国の王様。
私をこの国に連れてきた元凶である。



「お願いって・・・」 
鷹斗のお願いは洒落にならない。
前は外の世界を歩く代わりに、私からのキスをせがんだのだ。



(あ、あれは鷹斗がしろと言ったからであって自分からしたわけじゃないわ。
 でも確かにキスをしたのは自分で・・・)

そんな事を考えて赤面する。
赤くなった私を見て、鷹斗はやわらかく笑った


「一緒に、クッキーを作りたいんだ」








あれから私たちは鷹斗の部屋である実験室で
クッキーを作っている。









はずなのだが。


「ちょ、鷹斗!!!それお塩だから!!!!」

「え?あぁ本当だ、また間違えるところだったね」

あははと笑って砂糖を準備する鷹斗。


実験に関しては天童と呼ばれるほどの頭脳の持ち主なはずなのに、料理となると
ある意味違う天童と呼ばれるのではないかと思う


焼いているのを待っている間、鷹斗は私に紅茶を入れてくれた



(前の世界でも、子供のころ鷹斗とクッキーを作ったわね・・)
そんなことを考えて少し切なくなる。


あの世界の鷹斗は無事なのだろうか

理一郎やトラ、終夜に円、央にお父様達・・・


「前の世界に戻りたいの??」
鷹斗が私を覗き込んで聞いてくる。


「・・・」

戻りたいわけではない。
むしろ、今の鷹斗をこの世界においていくほうが心配なのだ。

反政府組織からの憎悪を、執念を、鷹斗はすべて一人で抱えている。


「帰りたく、ないわ。」

すると少し意外そうな顔をして鷹斗が笑顔になる。


「私は鷹斗をおいてあの世界に帰ったりしない。」



「うん、俺も君があの世界に戻ってしまったら
またこの世界を壊してでも君を連れ戻すよ」


重い愛だ。
しかし、この世界においては鷹斗の愛は成立される。
鷹斗のための世界であり、鷹斗が中心となっている世界だから。

人はこの愛をゆがんでいるという。
だが、もう既に私はこの愛に感化されてしまった。




「あ、焼けたみたいだね」
鷹斗がオーブンからクッキーを取り出し、皿に盛り付ける


「とっても美味しそうね」
「そうだね、俺が一人で作ったってこんな美味しそうにはならないよ。」

二人でクスクスと笑う。

熱めのクッキーだが、味は程よく甘く紅茶に合った。


「撫子」
「なぁに?」     「好きだよ」

あぁ、この人はこういう人だ。
雰囲気なんてまるで読まず、自分の思いを率直に伝えてくる。



答えられずにいると、鷹斗の顔がどんどん近づいてくる。
「撫子は?」
「・・・・・・好きよ」

そう答えた瞬間、鷹斗と私の距離が完全になくなった。
ほんのりと甘い味がする鷹斗の唇が何度も重なる



この国の王は、いつか殺されてしまうだろう。
それでも私は決めたのだ あの世界に帰らず、この世界で生きることを。



ずっと、このままで。








あとがき

いやー 何が書きたかったんですかね←
鷹斗はなんかもうヤンデレ王ですから私の中では!!

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