CLOCK ZERO

□愛した人はもういない
1ページ/2ページ


「鷹斗・・嫌よ、私は戻らないから!!」

叫ぶ声は、彼に届かない。
それどころか彼が嗅がせた睡眠薬のせいで頭がクラクラする。


「あなた、私と生きてくれるんじゃなかったの・・・!」

「ごめん」

「好きだって・・言って・・・
一緒に生きるって約束したのに」


「恨んでいいよ、俺のこと」


恨めるわけがない。
もうすでに、こんなにも愛してしまった人を恨むことはできないし
そもそも彼が壊れてしまった原因は私なのだから。


「嫌・・元の世界に戻ったら鷹斗に会えない・・のよ?」


カプセルの中で、声にならず嗚咽だけを漏らす


「世界なんて、壊したくなかった」

あなたはそういいました。
だけどごめんなさい。

そんなあなたを作ってしまったのは私です




「あの世界の俺のこと、大切にしてほしいな」


「そん・・・な・・の」


駄目だ、意識がハッキリしない。


私が最後につぶやいたのは、彼への謝罪と彼への告白。



そして、私が意識を失う前に見たものは


この世界の泣いている王様でした。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ