薄桜鬼
□守るべきもの
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千鶴が山南さんに羅刹のことでしつこく誘われているのは知っていた。
だけど俺には何もできない助けられない。
鬼から狙われているあいつを、ただの人間の俺が救えるのか。
そうか考えたら何もしないほうがいい・・
あんなことになるなんて、思いもしなかった。
日が完全に暮れて、誰もが眠りについたであろう時間帯に俺は土方さんの部屋にいた。
「なぁ土方さんよ、千鶴をなんとか江戸に帰してやれねぇのか」
実際千鶴の今の状態はよくない。 まるで初めて屯所に来たときのように沈み込み、元気がない。
「俺も帰してやりてぇとは思うが、それは無理なんだ あいつは自分の仕事をここでしなくちゃいけねぇとか言って、いうことをきかねぇ」
(しなくてはいけないこと??)
俺は嫌な汗をかいた
「あいつに何ができるってんだよ!!女だろ??
女の仕事は、幸せになることじゃねぇのかよ!!」
思わず声を荒げる。
苦しい、悔しい。
本当なら、俺が幸せにして・・
こんな危険なところにいてほしくないのに・・
「俺は無力だな」 そう呟いた俺は土方さんの顔を見た。
「あいつは、俺たちと出会って幸せだったと思うか??」
土方さんはふっと息を吐くと呟くように言った。
「あいつなら{幸せです}って答えるだろうな・・
それが本当の気持ちでないにしても。」
そうだ、あいつはそういう女だ。
だからこそ、屯所のやつらがあいつに惹かれていった。
「・・づるが!!?」
「はや・・・副長に!!!!」
「何だこんな時間に、外が騒がしいな」
どう考えても和やかな雰囲気ではない。
おおよそ悪いことであったのだろうと俺たちは目の色を変える
ダンダンダンダン!!! ガラッ
「大変だ!!!」
そこには8番隊隊長、藤堂平助の姿があった。
よほど急いできたのか、額には汗がにじみ出ていた
「どうした平助!!!?」
土方さんは尋常じゃない平助の焦りに戸惑ったのか、
冷静になりきれなかったようだった。
「ち、千鶴が変若薬を飲んだんだ!!!!!!!!!」
「「なっ!!!!!!!」」
二人の声が重なる。
ありえないありえないありえないありえないありえない
だってあいつは、「そういう」人間じゃない。
「今っ、総司と一君が千鶴を抑えてる!!!!早くっ、広間に!!!!!!」
急いで土方さんの部屋を出て、広間に向かう。
そんな・・・嘘だろ??なんかの間違いじゃないのか・・
頭の中が冷静になっていない。
仕方がないことだとわかっていても、どうしても理性が飛んでしまう。
「左之助ぇ!!!!!!!テメェが焦ってどうすんだ!!!!」
土方さんの言葉にハッとする。
そうだ、俺は今動揺してはいけない。
考えるべきなのは、まずは千鶴の安否確認だ。
広間に着き、襖を開ける。
「・・・・・・・・・・・・・千鶴!!!」