CLOCK ZERO

□神よ、あなたは不能だ
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「夕方って言っても、まだ少し明るいわね。
よかったわ・・」


「ふむ、これもやはり私たちの生態が可笑しくなっていると言う事か・・
太陽の日照りが可笑しくなり、私たちの暮らしも変わってしまったと。」


「そうじゃないと思うわよ」



ふむ、そうかとあっけらかんとしている終夜に苦笑いをしつつ、撫子はふと視界に入った道路の隅の黒い物体に目がいった。



「終夜、あれ・・・・」

「・・車に轢かれた猫であるな。
可哀相に、まだこんなにも小さい命を・・」


そう言うと終夜はおもむろにその猫を腕の中に抱いた。

突然の行動に驚いた撫子は、ハッと学校で習ったことを思い出す。


「終夜、死んでいる動物には触ってはいけないのよ。もし何か菌が付いていたら・・」



「撫子、そなたは私が道路で死んでいたらそのままにしているのか?」


珍しく怒りを含んだような終夜の声に撫子は目を丸くする。

結構長いこと、終夜とは共に居た。

その中でこの人は怒らない人なのだろうと、勝手なイメージをつけていた。



「確かにこの猫はそなたからしたら汚いのかも知れぬ。だが、私にとってこの猫は悔むべき存在なのだ」


「・・」


そう言って歩いていく終夜を、撫子は何も言わず付いていく。


(軽率・・だったわね)


自分の軽はずみな言動に反省をする。

そうだ、確かにこの猫は生きていた。
私の知らないところで生き、そして生きていたのだ。



「終夜、ごめんなさい」


「謝ることではない。私が感情を高ぶらせてしまったのだ。こちらこそ申し訳なかった」



いっそのこと責めてくれればよいものを、終夜は決して責めない
それが終夜の優しさなのだ
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