薄桜鬼

□守るべきもの
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「・・・・・・・・・・・・・千鶴!!!」

広間の襖を思い切り開ける。
そこには信じられない光景があった。


白い髪、赤い目。


まさしく羅刹と思われるその人物は、今まで人間だったはずだ。

それが今は総司と斉藤に押さえつけられている。

「ぐ、ぁあ!!・・・あああああああ」



(千鶴が、千鶴が変若薬を飲んだんだ!!!)

平助が言った言葉が嘘ではなかったと、今頃になって理解する。

「・・千鶴?」

おそるおそる声をかける。

「左之さん、ダメだよ。今のこの子には何も通じない。」

いつもの刺々しい口ぶりではなく、どこか諦めたような総司の声が聞こえた。



「・・通じないって・・・・」
そんなわけがない。だって、あの千鶴が・・


「総司、斉藤しっかり抑えてろ」

そういって土方さんは千鶴に近づく

「なっ、土方さんあんた!!」

ドスッ


「がっ・・あぁ」

刀の柄で千鶴の首あたりをうつ。
糸が切れたように千鶴は畳へ倒れこんだ


「・・・副長、いかがなさいますか。」

斉藤が土方さんに問う。
土方さんは少しの間考えてから、重い口ぶりで言った。



「・・・繋げておけ」


耳を疑った。


「何言ってんだよあんた!!千鶴をつなげるって・・・
 こいつは男の羅刹じゃないんだ!!!力もそんなないはずだ!!」


絶叫する。絶望する。
あなたはそんなヤツじゃなかったと批判する反面、
頭の中ではどこかそれが正しいと判断している。


「・・・原田、こいつは鬼だ・・」


だから何だというのか。

人間と傷の治癒の早さが違うだけだ


「彼女は自らの意思で変若薬を飲んだのですよ」

広間にいた全員が振り向く。

「山南さん・・・」

俺は自分の目が細くなっていくのを感じた。

「あんた・・・千鶴に何言いやがったんだ・・!!!!!!!!」

山南さんの胸倉をつかみ、叫ぶ。


「おや、私は雪村くんに強制などしていませんよ。

 {自分はここの役に立てない}
 {変若薬を飲んで新撰組の役に立てるなら飲みたい}

 そう言ったので私は薬を与えただけ。 結局は彼女の意思です。」


さも当然といった風で山南さんがやんわりと俺の腕を放す。

「あなたの望みと、彼女の望みは違う。」

「っ!!!」


「彼女は羅刹となった。
羅刹となったものは、私の配下に置くということでしたね。
彼女を連れて行きますよ。」


「あれ?でも山南さん、こんなときは副長の許可が得ないとダメなんじゃないですか?」

総司がいつもの軽口で話す。しかし、目が笑っていない

「お前はこんな時だけ副長を頼るな。」
斉藤が少し嫌な顔になる。

「それで?どうなんですか土方さん、彼女を山南さんに渡すんですか??」


「羅刹になっちまったやつはもう戻れない。」


「・・・・それって」

全員が目を見張る。


「千鶴を、羅刹隊に入れる。」
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