薄桜鬼
□笑う君が、眩しかった
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調理場へ足を急ぐ。
まさか気づかれていたなんて・・
そう焦りながらも、千鶴は自身の動揺を抑えようと必死になっていた。
幸いなことに原田はまだきていない。
おおよそ夕べに吉原に行って、永倉さんと共にお酒を飲んでいたんだろう・・
そう推測して千鶴は1人で朝食の準備を始める。
さすがに何十人もの隊士のご飯を作るのは大変だったが、ここに来てからは慣れてしまった。
(原田さん・・)
原田さんが異性からとても好意を寄せられるのはわかっている。
美形だからという理由だけでなく女を引き付ける色気であったり、優しさであったり・・
女が求める全てを、彼は備えている。
そんな彼が、小さな存在でお荷物の自分を好きになってくれる可能性など無きに等しいのだ。
千鶴とて女である。
そういう勘は、流石と言っていいほど鋭かった。
「よぉ、すまねぇな千鶴。遅れちった」
「っ、原田さん!おはようございます
よく眠れましたか?」
少し眠そうな原田を心配して千鶴は急いで水の用意をする。
女の白粉のにおいがして千鶴は顔をしかめたが、瞬時に顔を元に戻す。
どうぞ、と渡すと原田はすまねぇなと呟きながら水を飲んだ。
「・・夕べも遅かったんですか?」
「あぁ、新八が潰れやがってな。
女は酒を注いでくるわ寄ってくるわで大変だったんだぜ?」
通りで白粉のにおいがしたわけだ。
つまり、女と接近していたわけで・・
(駄目駄目!この気持ちは隠さなくちゃ)
年頃の娘が恋心を隠す事など、どれほどの苦しみかは彼らにはわからないだろう。
さらには男装、軟禁、父の行方不明・・
次々に問題が増えて行ったが千鶴にも、もちろん彼らにもどうすることはできなかった