無気力少女の、恋物語。

□01.彼はおは朝信者のようで
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「今日の蟹座のあなたのラッキーアイテムは、ピンクのフリフリハンカチ!」




毎朝お母さんが見ているおは朝をぼーっと鑑賞しながら髪の毛を整える。

ピンクのフリフリハンカチとか…蟹座の男の人どう考えても縁ないじゃん。


テレビにツッコミをいれたところでいつもの出てゆく時間になった。




『行ってきます』




誰もいない家にそう告げて、私は駆け足でバス停へと向かった。














バスに乗り、電車に乗り約一時間半。そこに私の通う秀徳高校は存在する。

いつものように門をくぐれば、立派な校舎が瞳いっぱいに広がった。



ヒラリ、



そんな私の視界の端で、ピンクの何かが舞った。
よく見ると、ピンクのハンカチのようだ。しかもフリフリの。


落とした人は誰だろう、と顔を上げてみて、私は自分の目を疑った。





『……え?』





何をどう見てもハンカチの落ちたところの近くにいるのは一人なのだ。

それが女子なら私は目を疑わなかった。


だが、そこにいるのは緑の髪の毛を揺らす身長の高い人…すなわち、


クラスメイトの緑間くん。



成績優秀、運動神経抜群。
あのバスケ部のエース様と称えられている彼が、あのピンクのハンカチを落とすのだろうか。



少し考えたあと、私はハンカチを拾って声をかけることにした。





『緑間くん』

「…………何なのだよ」

『これ、落とさなかった?』





くるりと振り向いた緑間くんは少し不機嫌なようだった。

少し怖気ずきつつ、ハンカチを差し出せば緑間くんは驚いたような顔をした。





「…俺のなのだよ。すまない」

『緑間くんってもしかして蟹座?』

「?そうだが。」



それが当然かのようにハンカチを受け取った緑間くんを見て私は不覚にも笑ってしまった。





「なぜ笑うのだよ」

『んーん?緑間くんっておは朝見てるんだなーって思って』

「おは朝の占いは絶対だからな」

『そうなんだ?確かに結構当たるよねあれ』

「ああ。………その…キャンディーはいるか?」

『へ?キャンディー?』






突飛な緑間くんの発言に思考がついていかない。

とりあえず「ありがとう」とてを出せば緑間くんはグレープ味のキャンディーをくれた。





『これ…もしかしてハンカチ拾ったお礼?』

「……ふん」





緑間くんの頬がかすかに朱色に染まったのを私は見逃さなかった。

お礼くらい、口でいえばいいのに。不器用な人。


そう思うとなんだか嬉しくなってきて私はグレープ味のキャンディーを口の中に放り込んで言った。




『ありがとう、美味しい!』

「キャンディーで喜ぶなんて子供だな」

『高校生ですからっ。じゃあ、私行くね!ばいばい』




同じ教室へ行くのにもかかわらず私は駆け足でその場を離れたのだった。



じゃないと、「子供だな」と行って笑った緑間くんの不意打ちのあの笑顔に耐えられなかった。
ドキドキ言っている心臓を抑え、私は思った。




(緑間くんって優しい、不器用な人なんだな。)










彼はおは朝信者のようで





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