無気力少女の、恋物語。
□05.二回目の放課後
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時は放課後。
「今日は英語をするのだよ」
『分かった!』
パラパラと英語のテキストをめくる。
昨日と同じで教室にはもう誰もいない。
私が教科書をめくる音と緑間くんがシャーペンをノートに滑らせる音だけが教室を支配する。
何かを書く緑間くんを少しだけ盗みみれば、少しだけチクリと胸が疼いた。
「天野は英語は得意か?」
『ん?私に得意教科はないよー、むしろ全部苦手だし』
「そんなことはないだろう。数学のテストで満点だったではないか」
『あれは緑間くんのおかげ』
「いや、あれはお前の実力なのだよ」
私の、実力。
その言葉に少しだけ嫌悪感を覚える。
『緑間くんは…自分の実力がいやにならないの?』
「興味深いことを聞くな」
『あ、ごめん』
「いいのだよ。俺は自分の実力以上のものを得られるように人事を尽くしている。この実力に嫌悪を覚えたこともあるが、それは昔の話だ」
緑間くんにもあったんだ。自分の実力に嫌気がさすときが。
そう思うとなんだか少し気持ちが晴れた。
「お前は、自分の実力を持て余しているのか?」
『そんなことないよ。』
そう答えれば緑間くんは少し何か言いたげな表情をしたあと、ノートに視線を戻した。
それを見て私も教科書に視線を戻す。
それから最後まで私と緑間くんの間に言葉が紡がれることはなかった。
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