無気力少女の、恋物語。
□06.逃げた代償は
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『………っ!』
がばっと起き上がる。
『……夢………か』
いつのまに寝てしまったんだろう。5限目の授業が眠いとはいえ。
……昨日は、眠れなかった。
緑間くんのことを考えるとバスケのことを考えてしまう。
そしたら、思い出してしまう。あの辛い辛い記憶を。
息が荒い。変な汗をかいていて気持ち悪い。
だめだ、無心でいなくちゃ。無気力でいなくちゃ。
じゃないと、自分を守れない。
*
緑間くんは昨日私が体育館を覗いてきたことを訪ねてはこなかった。
もしかしたら今日の放課後問われるかもしれないが今日挨拶をしても何を言われなかった。
それは好都合だ。
よく考えてみれば緑間くんは他人に踏み込んできたりはしないだろう。賢明な人だから。
「天野、ほら」
ぺらっと先生に差し出されたテストを受け取る。
昨日やった生物の小テスト……。
うわー…点数悪い…勉強してないんだから当たり前か。
なんて思いながらテストを折りたたんで引き出しに入れるとなんだか後ろからさっきを感じるような。
振り返れば、怒ったような緑間くんがこう呟いた。
「…今日は生物を勉強するのだよ……」
『………はい』
私はただひたすらに静かに頷いたのだった。
逃げた代償は
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