ツバサクロニクル

□阪神共和国
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絶対に飛王の思い通りにはさせない。

優しい彼らを守りたい。


侑子に夢は渡してしまったから、これから先の未来は分からない。

でも、私はきっと彼らを光に導くために生まれてきた。

だから、




「ぷう、みたいな」

「・・・・・・・・わっ!」

唐突に目が覚めると、白い生き物ーーーーもといモコナが目の前にいた。

「やったぁミヅキがびっくりした!」

モコナは嬉しそうにダンスしている。

周りを見れば、起きていたのは黒い服を身にまとった男だけだった。

「初めまして。ミヅキです」

侑子の所でミヅキは名乗っていなかったので一応挨拶した。

「・・・・・・・・黒鋼だ」

ぶっきらぼうな声だが、その視線は鋭い。

居心地がいいとは言えない視線に耐えられず、モコナを抱き上げた。

その時、どこだか分からない今いる部屋の外で音がした。

黒鋼ももちろん気づいたようだ。

ミヅキは未だ眠る三人を背にドアを向く。

音は確実に近づいてきた。

そして、ドアが開いた。

「やっぱり、来たんやなぁ。ハニーが言うとった通りや」

そう言って現れた男の人は笑った。

「そう警戒せんでええ。侑子さんのとこから来たんやろ、自分ら」

侑子。その名前が出てきたことでミヅキは一気に警戒心を解いた。

無防備に近づく。

すると、急に後ろから手を引かれた。

黒鋼だ。

「黒鋼さん?」

彼はミヅキの前に立つと無言で男の人を睨んだ。

「何や兄ちゃんエラいええ目してるやん。大丈夫や、危害加えるつもりはあらへん」

しばらく二人は視線を交わし、そらしたのは黒鋼だった。

殺気は感じなかったのだろう。

優しい、人なんだな。

「改めて、ワイは有栖川空汰や。お前さんは?」

「ミヅキです」

頭を下げた。

そして、後ろの方で物音がしたので見れば同じ色の髪の男の人が起きたようだった。

同様に彼も空汰を警戒した。

「あの、大丈夫です。侑子さんのことをご存知なんだそうです」

すると、彼はへにゃりと笑った。

「そうだったんですかー、初めまして、ファイです」

その後、空汰さんに事情を説明し、その間にもうひとりの少年、小狼が目を覚ました。

小狼が抱えている女の子はサクラというそうだ。


ーーーーーーこの子が、飛王の欲しがる力の器・・・・・・・・


事情を説明し終わると、今度は空汰さんがこの国のことを教えてくれた。

「巧断は誰にでも必ず憑くものや」

そこまで聞いて、時間が時間ということでその日は寝ることになった。

「部屋がな、ここともう一つしかないねんけど・・・問題はミヅキちゃんやなぁ」

「?私が何か問題ですか?」

何が問題なのか、イマイチ分からない。

「いや…さすがに黒鋼と一緒の部屋は」

「何で俺だけなんだよ!」

空汰は黒鋼を完全無視して話を進める。

「小狼はサクラちゃんと一緒におりたいやろ?」

「・・・・・・・・はい」

小狼は神妙に俯いた。

「私、黒鋼さんやファイさんと一緒で大丈夫ですよ?」

そう言うとその場にいた皆がミヅキを凝視した。

「・・・・・・・・ミヅキちゃんはもしかしていやもしかしなくてもかなりの天然ちゅうか、純白清廉な女の子なんやな」

結局ミヅキは嵐の部屋で一緒に寝ることになった。
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