Above the Clouds vol.2

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翌朝。一番最初に起きたのはクレアだった。目が覚めたのと同時に、姿を現す。
「お早う御座います、ルイ!・・って、きゃああああああっっ!!」
クレアの目の前には2人の男の全裸に、ルイに至っては首や鎖骨、さらには乳首の近くにもキスマークが付いていると言う、とんでもない光景を見てしまい、つい悲鳴を上げた。
その悲鳴に、ナギとルイは目を覚ます。
「ったく、ガキは朝からうるせぇなぁ・・」
「お早う御座います、ナギ、クレア」
「はよー」
「ナギ・・!貴方と言う方は・・!私のルイに、何てことをしてらっしゃるのかしらああぁぁぁっっ!この変態ぃぃっっ!!」
クレアは悲鳴並の高い声でルイに抱きつくと、ナギの腹に空圧を加えた。
「ぐげっ!」
「すみません、クレア・・。これはナギではなく、僕が誘って・・」
「ルイ!こんな男を擁護しなくて良いのですわ!私だって、ルイにキスマークを・・!きゃああっ!」
クレアが負けじとルイの首筋にキスをしようとすると、突然クレアの小さな体が宙に浮いて天井に背中がくっついた。
クレアの集中力が切れ、ナギに喰らっていた空圧が解除される。
「降ろしなさい!そしていい加減に服を着なさい!この変態ぃぃっっ!」
天井から離れないクレアは、手足をジタバタさせる。ナギは取り敢えずスーツを魔法で一瞬で着ると、ルイもつられてスーツを着た。
「俺ら付き合ってんだから、ヤることヤッて何が悪い?お前がルイと婚約解消をして更に俺を認めてくれたってことは、俺がルイと付き合っても良いってことだろうが」
「それとこれとは、話が違いますわぁ!ルイ!貴方はどうですの?!」
「すみません・・。僕から彼に告白しました・・」
ルイが真実を告げると、クレアは目が点になった。ルイはナギに視線を向ける。
「ナギ、クレアを降ろしてあげてください。可愛そうです」
「ちっ!ルイが言うなら仕方ねぇなぁ」
ナギは舌打ちをしてから渋々クレアを降ろしてベッドの上に着地させると、クレアは即行ルイに抱きついた。ナギはジト目でクレアを見る。
「ということは、元からナギのことが好きだったと言うことですの?!」
「そうですね・・」
「ひっく・・っ・・うわああああああんっっ!」
死んでも尚、ずっとルイを想い続けていたのに呆気なく失恋をし、クレアは酷く傷ついた。泣き方まで完全に子供になっているクレアに、ルイは困った表情を浮かべる。
"幼女"を泣かせてしまい、ナギも流石に少し反省の表情を示す。
「ごめんなさい、クレア・・」
「私が・・どれだけ・・貴方を想ってきたと思っていますの・・?ルイなんか・・!許せませんわぁ・・!」
クレアが怒りに満ちて歯を食いしばる。ナギは昨日タクが言っていた言葉を思い出した。
『隙を見て自分の中にそいつを取り込む目的で一体化したんだよなぁ?!それが悪魔のやることだからな!』
ナギはルイの身の危険を察知し、目を見開くとルイに声を掛けた。
「ルイ!クレアから離れ・・!」
「でも・・嫌いになれませんの・・。振られても、私はルイじゃなきゃ嫌なんですわああぁぁっっ・・」
悪魔の心よりもピュアな心が勝り、クレアはまたルイの胸に顔を埋めて子供のようにわんわん泣き出した。
何も起こらなかったことに、ナギは肩を撫で下ろした。クレアのルイに対して好きな気持ちがどれほど大きいかが、ナギには何となく分かってきた。
「有難う御座います・・。貴女は本当に心も素敵なレディですね・・」
ルイが優しい声でそう言いながら、クレアを我が子をあやすように髪を撫でた。ルイの声とスキンシップに精神的に落ち着いたのか、泣き止んできたクレアはルイに尋ねた。
「ルイ・・私のこと・・嫌いになったのではないですわよね・・?」
「まさか。嫌いになる筈がないじゃないですか。ナギもクレアも、僕にとって大切な人たちです」
ルイはそう言いながら、ナギとクレアに微笑んだ。ナギはルイの笑みにまた見惚れてしまう。
「ルイーーっ!」
クレアがそう言ってまたルイに抱きつくと、ナギも釣られてルイとクレアを抱きしめた。クレアは、どちらかと言うと包み込まれた形であるが。
「俺も、お前らを一生大事にするからな!」
クレアも含んでくれたナギに、ルイは笑みを浮かべた。クレアにとって予想外のことで目を丸くする。
「ナギ・・貴方、私まで入れて下さるのですの・・?」
「・・こう見てると、クレアがルイの子供みたいに見えて来てよぉ。なんだろーな・・親父になった気分っつーか・・」
照れくさそうにナギがそう言うと、クレアは頬を膨らませた。
「まぁ!貴方は何処まで私を子供扱いすれば気が済むのかしら・・!」
「どう見たって子供じゃあねぇか」
ナギがそう言うと、クレアは改めてナギとルイの顔を見つめた後、自分の背丈と彼らの背丈を見比べる。
2人が座っているのに対し、クレア1人が立っている状態なのだ。クレアは肩を落として軽く笑った。
「一般人の家族・・。私も経験がありませんし、それも悪くないかもしれませんわね・・」
クレアがそう言うと、ルイは幸せそうにナギとクレアを見つめた。
「か・・家族ってなぁ・・!俺ら、男同士だから籍は入れられねぇし・・!」
「あら。貴方、天使なのにご存じないのかしら?籍を入れずに家庭を築いている人たちは沢山いらっしゃいますわよ・・お父様」
クレアはそう言いながらナギを見つめて口元をニヤつかせた。
「お・・おと・・」
"お父様"と言われたことに対して不快に思わず、それどころか内心嬉しいとまで感じてしまったナギは顔が熱くなった。
「ナギがお父様とすると、僕は・・」
まさか自分はお母様になるのかとルイは察すると、クレアが満面の笑みで答えた。
「ルイは、ルイのままですわ!」
「そうですか・・」
クレアの考えていることがよく分からないルイは、取り敢えず無邪気な子供の話に付き合ってあげることだけを考えた。
「そういえばナギ。もう学生は皆、学校に着いているのではありませんか?」
時計を見ると、時刻は9時を指していた。
「よし。じゃあ学生たちに俺らの記憶を消しに行くか」
「ええ」
ナギの言葉にルイは頷くと、マンションの部屋から姿を消した。



vol.2 breathe love fin
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