Each life

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ファミレスに残された3人は、沈黙していた。
だが、そういったものが苦手なリンは沈黙を破る。
「何か、よく分からない人だったねー」
リンはそう言いながらも満更ではなさそうな態度で、がくぽがくれた雑誌を捲ると、
和柄の封筒が入っていた。レンがジト目で、リンを見つめている。
「何これー?」
不思議そうに、リンは小首を傾げて封筒の中を取り出した。
「チケット…?」
目を丸くして、リンは3枚のチケットをテーブルの上に置いた。
「ああ、がっくんのバンドが主催のライブだね。
きっと、俺たちに見に来て欲しいんじゃないかな。
ライブの誘いまでする時間がないと分かっていたから、こんなことをしたんだろうね」
大体がくぽの行動パターンが分かっているカイトは、そう解説した。
「え?!がっくんのライブ?!絶対に行くーっ!」
リンが興奮ぎみに食いついた。だがレンは、機嫌悪そうに口を開く。
「僕は行かないよ。リン、行きたいなら1人で行け…ぐはっ!」
レンが話している間に、リンが彼の頬をぶん殴ったのだ。
「はぁ?!リンが行くんだから、レンに拒否権はないの!カイトは、ガイドとして来てよねっ!」
「言われなくても、リンちゃんが行くなら着いていくよ。…心配だからね」
「良かったぁ!ライブ、丁度1週間後だねっ!楽しみーっ!着ていく服も考えておかなきゃ!」
1人で浮かれているリンと、ジト目のまま乗り気でないレンを
カイトは親のような表情を浮かべて見つめていた。


夜。寮の食堂で夕食を済ましたカイトとレンは、一緒に部屋へ戻った。
いつまでも不貞腐れているレンに、カイトが声をかける。
「そんなにライブ行くの嫌なら、リンちゃんと2人で行ってこようか?」
それを聞いて、レンは目を見開いた。
「…だ」
「ん?」
「やだっっ!!カイトさんが、リンと2人で行くくらいなら、僕も行くっ!」
突然、変声期前の甲高い怒鳴り声をあげられ、カイトは目を丸くする。
「2人で行くとすると、リンちゃんのことが心配になるのかな?俺は単に着いていくだけだよ。
ライブハウス(箱)の場所も分からないだろうし、がっくんのバンドは大体、
大学生〜社会人のファンが多いし、何も知らない女子中学生を1人で行かせるのは
何かと危険なんだ。信用してくれないかい?」
「違うよ!そういうんじゃなくて…っ!」
―逆だよ…。リンは、カイトさんのこと気に入ってるんだよ…。
2人きりになった時に、カイトさんが、リンとくっついたりしたら…僕は…―
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