Above the Clouds vol.1

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―昨日のルイが堅苦しい雰囲気だったのに、今のルイは温かみがあるのも、何か分かった気がする。この雰囲気で"僕は天使です"って
言われても納得行くもんなぁ―
"暗闇の世界"には悪魔が居たのが理由の1つで、今のルイが本来の彼の本質なのだろうと、亮は自己解釈した。あと疑問に残っているのは
2つあるが、その内1つは聞く勇気が出ない。
―彼女居るのか?って、居るに決まってるよな。この顔と性格で居ない方がおかしいし、奨とは別の意味で女子に不自由なんかしてないだろうし。
仮に質問したとして、ルイの口から"居ます"って言われるのは・・何だか嫌だなぁ・・―
思い詰めた表情を浮かべている亮を見て、ルイは心配そうに眉を寄せる。
「・・亮?どうなさいましたか?すみません、僕の話が現実離れをしすぎていて、困ってしまわれたのですね」
「違う!そうじゃあない!何でもないんだ、気にすんな!」
―変なことばっか考えてる俺が悪いんだよッ!―
本当はそう付け足したかったのに、それを言ったらルイにも変に思われてしまうかもしれないという直感が働き、声に出なかった。
焦って大声を上げてしまった亮に、ルイは目を丸くしたが、少し考えてから微笑んだ。
「・・分かりました。貴方がそう言うのなら、気にするのを辞めましょう」
「あ・・嗚呼。気を使わせちまって悪いな・・」
「いいえ」
亮は気恥ずかしくて中々ルイの顔を見ることが出来ないが、ルイはずっと自分を見てくれている。それだけでも、亮は心臓の鼓動が高鳴っていた。
「・・あのさ、最後に1個質問していい?」
「どうぞ」
「その・・ルイに触ると、人の体温とはまた違った暖かさで、精神的に落ち着くのは何で?天使だから?」
その質問に、一瞬だけルイの目が亮から視線が外れ、ほんの数秒だけ間があった。今まで質問を即答してくれていただけに、亮は不信感を抱く。
―・・あれ?もしや、ヤバイ質問だったか?―
「・・それもありますが、これは天界での修行の成果の1つです。同じ天使でも1人1人、触れると感覚が若干異なります」
「そうなんだ・・」
亮は聞いて後悔をした。話を聞くだけで良かったのに、ルイに触れたい衝動に駆られる。
―あの心までも温かくしてくれる感覚・・あれを今ちょっとだけ味わいたい―
「ちょっとだけ・・手を触ってもいい?」
「・・良いですよ」
そう言うと亮が立つより先にルイは席を立ち上がると、彼の前に立ちはだかり片膝を付いて、亮の視線に合わせる。
「・・どうぞ」
ルイがそう言って亮に手を差し出す。
―ちょお・・!おいおい、俺は一般庶民だぞ?!こんなんされるような身分じゃねーのに!てか、行くの普通は俺の方だろ!―
ルイの行動に、亮は困惑しながらも彼の手に触れた。やはり、昨日と同じように精神的に落ち着き、気持ちまでもが暖かくなる。
先ほどまでの焦りも嘘のように落ち着いた。
「指・・長くて細いな・・」
―俺が如何に手が小さいのかが分かるな・・―
「有難うございます」
だが、亮は"この屋敷に来る前"に思っていたことが思い返される。
―やっぱり、この手でルイに触れて貰いたい・・。触れて貰ったらどうなるのか知りたい!そうだ、俺がルイの手以外触らなきゃ、
悪魔と一緒にはならないだろ?別に少し触って貰うだけだし、ルイに彼女がいたって、俺は女じゃないんだから浮気にはならないよな!―
亮は無理やり自分の意見を押し通すと、意を決して口を開いた。
「・・ルイ、頼みがある」
それを聞いた瞬間、ルイは一瞬目を見開いた。
「・・何ですか?」
ルイは優しい口調で物静かに尋ねるが、彼の目が若干、恐怖に怯えているように見えた。
「俺の・・体に触って欲しい」
「・・僕が、貴方の体を触るだけで宜しいのですか?」
”だけ”ということは、その先もして良いと言うことなのだろうか。だが、先ほどの悪魔についての話が脳内にこびり付いて離れない。
「・・俺は悪魔じゃないから、それだけで良い」
―"彼女"にも悪いし、悪魔と同類に思われても嫌だからな―
亮は脳内で嫌味たらしく付け足した。
「分かりました。お先にシャワーに致しますか?それとも寝室に直行致しますか?」
「え・・?えっと、直行・・」
一気に緊張し始めた亮は、シャワーに行く理由がパッと思い浮かばず、思わず直行と言ってしまった。
「それでは、寝室へ移動しましょう」
ルイがそう言いながら立ち上がる。
「お・・おう・・」
普通の人が"寝室"と言う言葉を使っても何ともないのに、ルイが言うと生々しく感じるのは何故だろう。もう普通の男としてみてない証なのかもしれない。
亮は既に、脳内で心臓の鼓動が響いていた。
―ヤバイ・・。理性が保つんだろうか・・。そうだ、俺は悪魔じゃあない、人間だ、人間だ―
亮はずっと自分に思い聞かせながら、ルイに着いて行った。
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