Above the Clouds vol.1

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自分の部屋にルイを通すと彼が猫の姿故に、亮は取り合えず受け皿にミルクを入れて彼に出した。
「有難う御座います」
ルイが礼を言ってから、ルイは牛乳をペロペロと舐めながら少し飲んだ。
「あのさ。ルイ、さっき学校の資料室から見てたよな?」
「ええ。実は、申し訳ないのですが亮が今朝、目が覚めた時から様子を拝見させて頂いておりました。あのままだと貴方はまた、
今日の夜に"暗闇の世界"へ行ってしまうと思ったのです。由宇を信頼していないわけではないのですが、もしかしたら貴方が"暗闇の世界"に
閉じ込められてしまうかもしれない。そう思ったら、どうにかしてでも、今日中に貴方を元気付けないといけないと思いました。
そして誠に勝手ながら貴方の友人、奨についても"調べ"させて頂き、彼に協力をして頂くことにしたのです」
まさか、奨の名前が出てくるとは思っていなかったので、亮は目を見開いた。
「ってことは、ルイ・・。奨に何かしたのか?!」
「ええ・・そうですね。申し訳ございません。彼は、ずっと貴方のことを好きだったようで、想いを伝えることが出来ずにいたようです。
なので僕が彼に本当のことを言えるよう、後押しを致しました。彼の存在によって、亮が少しでも元気になってくれたらと思った次第です」
今朝、自分があれほど落ち込んでいたのを誰より心配してくれていたのはルイだったということを知って、奨よりも彼の方が良いと思ってしまう自分が居た。
―結局ルイが居なきゃ、俺は此処まで立ち直れなかったんだな・・―
亮はそう思うと握り拳を強く握って、意を決すると息を大きく吸った。
「なぁ・・ルイ・・。俺、ルイのことが・・!」
「奨は、良い人ですよ」
亮の告白を打ち消すかのように、ルイがそう言った。
「え・・?」
まさか、告白をする前に失恋をするとは思っておらず、亮は絶句した。
「奨は、亮が思っている以上に貴方を想ってくれています。彼なら、僕なんかよりも貴方を幸せにしてくれると思いますよ」
「・・でも・・俺は・・」
亮は目頭が熱くなり、涙声になる。泣き顔を見られたくないため、思い切り顔を下に向けた。
「申し訳ないのですが、僕が個人的な理由で、亮を助けてあげられるのは、今回限りです。今でも悪魔からの気配は消していますが、
あまり長く1人の人間の傍にいると風の噂で悪魔が嗅ぎ付けて、貴方が危険な目に合ってしまうためです」
「・・・・」
亮は黙り込んだまま、手の甲に水滴が落ちた。少なくとも現実世界で、ルイと会えるのも今回限りと言うことを理解したのだ。
「ごめんなさい、亮。分かってください・・」
「・・・・」
優しく、でも切なく謝られてしまうと、亮も頷くことしか出来ない。
「有難う御座います」
ルイはそう言って切なげに微笑んだ。そして、亮を励ますようにルイが口を開いた。
「貴方は、二度と僕に会えなくなると思っているようですが、"普通の"夢の中でなら、またお会い出来ますよ」
「そうなのか・・?」
「ええ。しかしながら、僕は今後"忙しく"なると思いますので、今までのように頻繁にはお会いできなくなると思いますが、時々はお会いしましょうね」
それを聞いた瞬間、亮は目を丸くして一気にテンションが上がった。
「嗚呼、勿論!・・俺なりに奨のことは、もう少し考えてみるよ。ルイがそこまでアイツを推すなら、少し考え方も変わったしさ」
「ええ。奨も時間をくれているようですし、ゆっくり考えてみてください」
その時、ルイの首の鈴が突然鳴り出し、彼の体が光に包まれる。
「申し訳ありません、僕はそろそろ行かないと・・。最後にお詫びを言わせてください。突然、夢の中から消えてしまって申し訳ありませんでした」
「良いよ。今、現実でルイに会えたことと、今後も夢の中で会えることでチャラになった。・・本当にありがとな。お前に会えて良かった・・」
亮はそう言って、泣くのを堪えて無理に笑みを作った。
「亮・・」
ルイがそう言った瞬間、目頭が熱くなった。
「僕も、貴方に会えて良かったです・・。あそこで僕に気遣って下さったのは、貴方だけでしたよ・・。それでは、また夢の中で・・」
ルイがそう言うと、光と共に彼の姿が消えた。光が止んだ瞬間、亮の目から一気に涙が溢れ出した。
「ルイ・・っ!うぅ・・っ」
亮は肩を震わせ、声を押し殺して暫く涙を流した。
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