BOOK

□主人公登場
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[着いたでー!]



海に浮かぶ小さな船の上で、手に本を持ち、馬鹿デカイ声をあげる眼鏡がチャームポイントの女性



『うるさいなぁ……』



甲板にゴロゴロしながら、女性に口答えするショートパンツを履いた、幼さをまっとった顔つきの少女。
すると、女性は少女に近づく。
途端、船中に鈍い音が響き渡る。



『イッッッターー!!』



同時に少女も叫び、すぐさま起き上がり自分の頭を撫でた。
それを見下ろす女性…手には、先ほどから持っていた分厚い本。
どうやら女性は、それで少女を殴り大打撃を与えたようだ。
現に、少女は涙目になっている。
頭の痛みがひいたのか、少女は撫でるのをやめると見下ろす女性を見上げた。



『何するの、リサちゃん!!』



リサと呼ばれた女性は、少女の叫びを軽く鼻であしらうと、クルリと180度回り甲板を去って行く。



『む、無視!?』



少女は、驚きを隠せない顔でそう言うと、眉をハの字に曲げてから立ち上がり、大きく背伸びをした。
それから少女は、チラリとリサの方を見ると、同じようにこちらを見ていたリサと目が合う。



[ええさか早よう用意せェ、島に着いたんや]



呆れたように言うと、少女はさっきまでの顔は何処へやら…唇で弧を描き、リサに駆け寄った。



『マヂで!?』
[マヂだ]



リサは、興奮気味の少女に冷静に返すと、少女は両手を横向きに合わせ手を擦りあわせたった。
まるで何かねだるような手つきだ。



『リサちゃんは、優しいね』
「急になんやねん」
『いやいや、いつも思ってるよ?』



少女が手の動きを変えないまま言うと、リサはまた呆れたようにタメ息を吐くと、眼鏡をクイッと人差し指で持ち上げた。



「…つまりお前は、いつも思ってるけど、いつも言わず…それを島に着いた今日、しかも知ってか知らずか街があるこの島で、たまたま!あたしに言ってきたわけやな?」
『うんそう!たまたま!いや〜偶然って恐いね』



アハハと、なんともうさんくさい笑いを見せながら言った少女。
リサはそれを見て、無言で再び持っていた本で少女を殴った。
少女は変なうめき声を上げて、その場にしゃがみ込み、リサは持っていた本を脇に挟んだ。



「しょうもない嘘吐くな。あたしは、食料の買出しがあるから、お前にはかまってられへんねん。行くんやったら、ひとりで行け」



その言葉に、少女が上を見上げる。



『え〜連れないな〜』
「ほた何か?次またいつ、島に着くかわからんこの船のために、大量の食料を一日かけて買うの『いってらしゃい、頑張ってね』……」



リサの質問に、即答した少女はムクリと立ち上がり、隣にいるリサを見てにっこり笑った。



『じゃ、ひとりで行ってくるよ?』
「あぁ…言うとくけど、騒ぎだけは起こすなよ?起こしたら…夕飯のデザートなしや」
『なんと!それは、死守しなきゃね!』



そう言って、リサにグッと親指を立てて見せると、船の柱に立てかけられている、青黄色青としましまに彩られた、車輪つきの板のようなものを手に取った。



「街はここの裏側にある」
『誰情報?』
「さっき、島に下りたら住人っぽい人が教えてくれた」
『なら確か』



弾んだ声で言うと、海に向かって船を飛び下りた。
水面への着地の際、素早く手に持っていた板を足の下にしく。
少女は、板の上に乗り水面に浮くと、リサに手を振りながら、激しい水しぶきを立て、島の海岸に向かった。
じょじょに、遠ざかっている背中を視界に映しながら、リサは声をもらした。



「あいつに、賞金ついたぞって、言うん忘れた…」



リサは、少女が島に着いた姿が、微かに見えると、眼鏡を押し上げた。



「まァええか」
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