思いと歌と浮遊城

□黒衣の狂人
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言いきった直後、俺は眼前の拳を掴んでいた。
「俺のせいで5人が死んだ。死ぬ理由なんてこれで十分だろ!!」
視線で人が殺せそうな雰囲気だ。しかし俺はそれを正面から受け止めた。
「なるわけねーだろ!!
お前は死んでなにすんだ?すみませんでしたって土下座すんのか?
ふざけんじゃねー!行動を伴わない謝罪に、意味なんかねーんだよ!!!」
「……じゃぁ…俺は…どうすればいいんだよ…」
キリトは床に崩れ落ち、涙を流しながら言った。
「誰が死んじまったなんてことは聞かない。でも、償いをするんなら、お前は生き残る為に、現実世界に帰るために、ここで生きるしかねーんじゃねーか?
後は俺の家の昔からのならわしだな…。」
そういって俺は腕を振り上げた。
「キリト!!歯ぁくいしばれ!!!」
ここは宿屋の中なので、人に手はだせない。それでも俺は殴った。キリトはびっくりして目をつむったが当たらない事に気付いて、すぐに目を開けた。
「めーさめたか?お前のする事は生きることだ!!その上で攻略組として戦うことだ。
間違ったって構うんじゃねー。時には死んだ奴らを思ったって構わねー。
でもな、考えるのは過去じゃなくて未来だ。
お前が知った苦汁をお前の手が届く場所にいる人に、飲ませんじゃねーぞ。」
キリトは泣いていたが、最後は大きく頷いてくれた。
その後パーティーに誘ってみたが、やっぱりそれはできないと言うので、無理強いはせずに、フレンド登録だけをして別れた。別れ際、
「次は攻略会議で会おう。俺は負けない。
あいつらの分まで生き抜く!!…でも傷はまだ消えないかな‥」
「そんな簡単に癒えるわけがねえよ。
じっくり時間をかけて、何かきっかけを掴んで、誰か、俺たちじゃない誰かに打ち明けるんだな。
後は…俺の直感だが、何かある気がするぜ。そいつらからお前に。」

ユラには相変わらず意味不明とか言われたが、俺は根拠のない自信があった。
絶対に何かある。そう思った。

キリトと別れた次の日、第32層のボスが発見された。
キリトもボス攻略に参加するという。俺とユラは、気持ちを新たに準備に取りかかった。
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