思いと歌と浮遊城

□覚悟の理由
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12月にもうすぐはいろうかという今日、第48層の攻略会議が開かれた。
偵察組の報告によれば、敵は<ザ・ブラックミスト>。
文字通り、霧のように形を変えながら襲ってくるという。
そのせいで攻撃パターンが掴めなかったらしく、なかなかキツい戦闘になることが予想された。
幸い、攻撃力防御力は低めで、mobもポップしないらしく、その点をつければ何とかなるだろうということだ。
今回はたしか<血盟騎士団>が仕切るはずだが、リーダーは誰なのだろうか?
あそこの団長は強いが、あまり大々的に人を統率する人では無かった気がするが…。

そう思っていたら、1人の女性プレイヤーが声をあげた。
「静粛に!今回指揮をとることになった、血盟騎士団のアスナです。」
どうやら今回は<狂戦士>アスナが仕切るらしい。
まぁあの美貌だし、カリスマ性はバッチリだろう。
客観的に言えばこんな感じたが、主観的に言わせてもらえば、かなり心配である。
あいつの瞳には[焦り、絶望、疲労]が強烈にでている。
隣のユラも気づいているくらいだ。かなり重症だろう。
……大丈夫だろうか?
「…ト君。カイト君!」
「おっとわりぃわりぃ。また1人で懸念材料を考えてた。
…悪い癖だな。」
「作戦会議には真剣に参加してください!
もう一度言いますが、あなたとユラのペアはアシストに徹してください。」
「予想通りだな。了解。」
アスナはキリキリと指示をだしている。
俺たちにはもう目もくれない。
「ねぇ、何で予想通りなの?」
「だって俺たちって、攻撃力には自信あるけど、不定形でどこから攻撃してくるかわからない敵には対応できないだろ。
俺たちっていうよりは俺はってかんじだけど。
カウンターは強力だけどリスク大きいしな。」
カウンターは2方向同時に攻撃されると、かなり厳しいのだ。
一応できるし、2つに当ててカウンターをすれば威力はさらにあがるが、あくまでも相手が両手で攻撃してくるのが前提である。
腕がなく、どこから攻撃してくるかわからない今回のボスは、不向きと言える。
「なるほど…じゃぁ私は?」
「フォアードの俺がいない状態だと、微妙と判断したのかねぇ。」
「なるほど…今回はカイトが歌ってるのを護衛してるだけかな?」
「それだけだといいけど…。」


聞いている限りは完璧な配置と作戦。
しかし、俺の心は、不安がもやもやと渦巻いていた。
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