思いと歌と浮遊城

□強者の微睡み
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決意を固めたあの日から早くもひと月。
俺たちは限界ギリギリまでピッチを上げて、攻略に勤しんでいた。

流石に疲労がピークに達し始めていた俺たちは攻略層の主街区にあった、小高い丘の上、1本だけある桜の木の下に座り込んでいた。

目の前には第60層の街並みが広がっている。この層は木造の建物が多く、なんだか落ち着く景色だ。

攻略に行かねばと頭では思っているが、地面が俺の体を引きつけて離さないかのように起き上がれない。
今日はもういいやと思って、さっきからだらだらしている。

今日は木漏れ日は心地良い上、風がとてもすっきりしていて、さらさらと頬を撫でる感触も気持ち良い。

もう休めとゲームが言っているような陽気だ。
しかしながら今日攻略に参加しない理由のうちで、最も大きなものは、隣…いや太もも辺りにいるが‥の女の子にある。
「普通爆睡するかぁ?…まぁいいけど。」
ムニャムニャとか言いながら、だら〜っと寝ているユラ。
その顔をあらためて見てみる。

整った顔立ちは、小学生の頃から有名だった。昔は可愛いといった印象を持っていたが、俺が1年先に中学にあがる頃には、大人っぽくなり、格好いい印象すら抱いた。女子にしては高めの背丈。少し長めの髪は、流麗な黒。<アインクラッド二大戦姫>と呼ばれるのも頷ける容姿だ(当然もう1人はアスナだ)。
ユラの頭を撫でながら、『暇だなぁ…』と思いつつ、鼻歌を口ずさんでいると、不意に人の気配がした。
微妙に警戒を強めたが、やってきたのは知り合いだった。
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