Novel.
□夜の海に浮かんだ月と貴方の涙。
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__福岡。冬の海。
潮の匂いと冷たい空気が私の黒髪をなびかせる
彼と出会ったあの日から
彼を失ったあの日から
最期はここで、と決めていた
黒と白を基調とし綺麗にレースの施された服をまとい
水の中でも落ちないようにと、研究を重ねた綺麗なアイラインと林檎のように赤いリップ
左手の薬指には彼と御揃いのリング
纏う香りは彼が愛用していたブルガリブラック
_貴方は、どんな顔をして私を迎えてくれるんだろう。
『幸せに何時までも2人で_』
御揃いの指輪に誓ったばかりの約束は風に吹かれる砂の城のように脆く、崩れた
彼が事故で亡くなってしまったから
彼の居なくなった日々は酷く色褪せた物に見えた
周りは偽善で塗り固められ
家も学校も親も友達も_
私の中でちっぽけなものへと変わっていた
周りから見た私はきっと惨めだったんだろう
『目に光が無い』
『生力が無い』
そう、言われ続け痛みは手首、首、足、顔を赤く染めていった
もう、限界だった
薬を飲んでも
手首を切っても
言葉を吐いても
痛みは、収まらないまま
夢で見るのは彼のこと
過ごした日々
_何時から依存してたんだろうね…
泣いて
泣いて
やっと辿り着いた答え
『貴方の元へ__』
__今日のこの日は貴方と初めて出会った日
久しぶりに会う貴方には一番きれいな私を見てほしい
私は何錠かの睡眠薬を飲んだ
苦しくてもがいてる姿なんて見てほしくないから
貴方の歌った聲を聞きながら黒く染まった海へ進む
波はとても静かで再会を迎えているかのようだった
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