短編小説
□相談
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夏も終わりそろそろ肌寒くなってきた季節。
「はぁ〜。」
と、誰もいなくなった教室で日直の仕事を終えた私は盛大にため息をついた。
私は悩んでいる。
今日の夕飯はサンマがいいなとか今日テレビなにやってるっけとかそんなくだらないことじゃない。
「どうしたら気づくかなあの馬鹿ブン太。」
そう、クラスメイトの丸井ブン太のことだ。
実は私は中学生になってから3年間ずっとこいつに悩まされている。
「おーい、伊織〜‼」
きた、ブン太だ。
「ブン太じゃん。どうした?」
「フられた。だからなんかお菓子くれ。」
「だからの意味がわからない。で、今回は何でフられたの?」
私は何故だかこの赤髪のことを好きになってしまった。
中2の後半でそれに気付いたけど時すでに遅し、私はこの赤髪の良き理解者、恋愛の相談相手となってしまっていたのだ。
「そーれがわかんねぇんだよな〜…この前お前にもらったキーホルダー自慢したらいきなりビンタされたんだぜぃ?まったく…意味わかんねぇよ。」
「こっちが意味わかんねぇよ。アホかお前は。この鈍感、馬鹿。」
「なっ⁈」
何で彼女の前で他の女からもらったキーホルダーの自慢するかね。
そりゃあふられますよ。
はぁ〜と私は深いため息をつく。
「あんたこのまんまじゃずっとフられ続けるよ?」
「そこまで言わなくてもいいだろぃ?でもまぁ…そうか…だったら伊織だったらどうする?」
どうする、と言われましても。あんたが恋するたびに失恋する私からは何も言えませんな。
とは言えない。
何と言おうか…。
「…とりあえず、彼女できたら私に関わるのやめたら?」
「はっ?」
はっ?…って…どこにそんなに驚く要素があったんだ。
皆目検討がつかない。
だって普通のことじゃないか。彼女ができたら他の女にかかわらないなんて。
「はっ?って言われても…普通じゃない?」
「普通じゃねぇ‼…お前と話せなくなるのは何か嫌だ‼」
ツキン…
え…?何で?
なーんて。ちょっと期待するけどどうせまた「だってお菓子もらえなくなるだろぃ?」みたいなこと言ってくるんだ。
「何が嫌なのよ。」
「だって…なんかさみしくね?」
予想外。ブン太がそんなこと言うの。
でもま、そのまんまの意味で深い意味はないんだろうな。
「そう。」
この一言を最後にこの日はそれぞれの帰路についた。