短編小説

□はにわ
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春も終わりに近づいてきた頃。






幼馴染みであり、マネージャーと部員でもある伊織と切原は放課後、珍しく図書室で勉強会を行っていた。


テスト2日前ということも関係しているが、部内で「テスト赤点禁止令」が発令されたことが図書室で勉強会を開くことになった原因である。







「ねぇねぇ赤也〜!!見てよこの写真!!」

「んあ?……どっかでみたことあるような…。」

「そりゃあね。1時間目の歴史の時間のときでてきたはにわだもの。」






いま伊織たちは歴史の勉強をしている。何故なら例の「テスト赤点禁止令」によって赤点をとってしまえば2人は真田からのお説教プラス家庭教師真田先生と幸村先生による勉強会に一週間強制参加させられるためだ。

もちろん勉強が苦手な2人はどうにかこれを回避したい。

そのためいま図書室で勉強会をしているのだが。









「違うんだよ。そっちじゃなくて、こっち。誰かにめちゃくちゃ似てない?」

「…うわっ!!柳生先輩「シッー声でかい!!」っ悪りぃ。」







勉強する気など微塵もないらしい。








「このポーズ、腕の上がり具合…これどう見ても『アデュー』の後の柳生先輩よね…。」









伊織は歴史の資料集にのっているはにわを指差し、切原に語りかける。

切原は資料集をじっと見つめ何かひらめいたように唐突に筆箱から鉛筆を取り出した。








「『カリカリ…』やっぱ柳生先輩はメガネがないと!!」

「おお〜流石後輩!!って、どぅふっ…めっちゃ似てる(笑)」

「だろ?」








会話がきれ、とりあえず目の前の勉強道具に目をやるも、全くやる気が起きない二人はそっと各々が持っていた参考書を閉じた。







「切原くんと逢坂さんではありませんか。何をされていたんですか?」

「「………。」」








はにわを柳生に似せて遊んでいたなどと言えるわけもなく、黙り込む2人。










「おや?歴史の資料集は今はこれを使ってるのですね。我々の頃は違う会社のものを使っていたのですよ。失礼逢坂さん、見せてもらってもいいですか?」

「だめ!!……ではないですけどちょっと落書きとかしてあって恥ずかしいかなぁ〜なんて。」

「構いませんよ。雰囲気が見たいだけですから。」

「…あー!!そういえば!!伊織、最近お前仁王先輩と仲いいよな!!」

「はっ⁈何言ってんの!?」






切原のいきなりの発言に戸惑いをかくせない伊織。彼なりに窮地を脱しようとしたらしいが伊織にとってはありがた迷惑でしかない。


残念なことに暴走した切原は止まらない。






「この前もさ、部活のときに仁王先輩になんか貰ってたじゃん。」

「あれは弟の誕生日プレゼントなの!!!」

「伊織も伊織ですげぇ喜んでたし?あ〜仲いいな〜みたいな?」

「なんでよ⁈一体どんな流れでそうなるの⁈」

「仁王先輩も伊織のこと気に入ってるみたいだし?だけどまあ俺だって仲いい訳だから負けたつもりは全然ないけど。」

「何の勝負に負けんのよ⁈」

「ほーぅ。」

「柳生先輩…?……まさかっ⁉」

「聞いてくださいよ柳生先輩、この前なんて俺が伊織って可愛いッスよねっていったら『お前には渡さんぜよ。』って。いつから伊織はあんたの彼女になったんだ!!って。俺だって伊織のこと好きだし、彼女にしたいな〜とは思ってたけどまだ全然奪われたとかは思ってなくて…」






予想外の展開。公開処刑といっても良いぐらい恥ずかしい発言を堂々としていくしていく切原。

伊織はかおが真っ赤だ。







「////赤也⁈おーい!?やめてそれ以上は⁈…ていうかね、これ以上は多分赤也が自滅することに…」

「でもまあ伊織といる時間が長いのは幼馴染み兼クラスメートの俺の方が長いわけで?」

「切原赤也ぁぁぁぁ!!!?」

「うるせぇなんだよ⁈」

「これ柳生先輩じゃなくて仁王先輩だよ!!」

「そんなの関係な……ってうわぁぁ⁈」

「ほぅ〜赤也はそんなに伊織のことが好きなのか。この録音したやつ今から放送室いって流してくるかのぅ?」

「はっ?………えっ…ちょ、うわぁぁぁぁ!!!!」







今更自分のしでかしたことに気付く切原。口を手で抑え自分の表情をかくす。顔も目も真っ赤だ。

そして仁王に伊織への思いがばれてしまったことを嘆いたがそれ以前に本人にばれていることを思い出して机に伏せた。





「あ〜やっちまった〜。」

「切原、落ち着いて聞いて……。」

「…んあ?」

「…仁王先輩はね、実は私の従兄弟なんだよ。」

「っええええ!!!!!?」






衝撃の事実に驚く切原。仁王はしたり顔をしている。






「それを先に言えよ馬鹿!!俺、変に勘違いしちゃっただろ?」

「赤也をからかうのは楽しかったダニ。これからも楽しませてもらうぜよ。」

「からかわないでくださいよ〜。あ〜俺カッコ悪りぃ〜。」

「赤也、さっきの告白、し直さなくてええんか?」

「あっやべっ…あのままは確かに俺的にも嫌だしな。ってかあれは告白って言うんスか?」

「言うじゃろ。…後は若いもんに任せるかのぅ。それじゃあなお二人さん。」

「えっ?仁王先輩⁈」






仁王は「アデュー」と言って半笑いで去って行った。







「…それじゃあ、気を取り直して…ってか俺が言おうとしてることわかってんだろ?返事は?」

「なんだその偉そうな態度は。雰囲気とか気にしないのかこの男は。…まあいいか。ったくもーー大好きだこの野郎!!」

「へへっ俺もだ!!」

「ちょっとここは図書室ですよ?静かにしてください!!」

「「…へーい。」」






晴れて2人は恋人同士となったわけだが、後日告白の様子が放送で流されそれから半年間はからかわれることになった。

もちろん犯人は仁王である。

そして落書きのことも知っていたらしく柳生にばらされ、柳生には怒られなかったものの「人を馬鹿にするとは、たるんどる!!」となぜか真田にこってりしぼられた。





「「流したの仁王先輩でしょ⁈」」

「さて、何のことかのぅ?」

「ばらしたのも仁王先輩ッスよね?」

「…プリッ。」

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