フラン

□カミサマ、
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(ちびフランから10年後フランになります)





ふわふわで黒のロングヘアの女性。

随分と彼女に似ている人を見た。





カミサマ、



ミーがまだ日本に来て間もなくの頃、師匠の目を盗んで黒曜ランドから抜け出した時だった。

しばらくぶらぶらと周辺を散歩していたら、それはおもいっきりミーの腰にぶつかってきた。



ドンッ!!!


「ゲロッ!」

「ぷぎゃ!!」


不意打ち過ぎて不覚にも地面に顔から倒れこんでしまった。

「いたた…なんですかー、もうー」

あごの辺りを軽く擦ったらしくヒリヒリする。
若干イライラしながら、身体を起こし後ろを振り向いた。

少しグロイ幻覚でもかけてやろうと思いながら。













だけどそれは叶わなかった。

どうしてって、それは

「ごめんなさいっ!へいきですか?」


いきなりのドあっぷ。

ミーと多分同い年くらいの女の子。ふわふわで黒のロングの髪の毛が日の光に反射してキラキラしてた。

つまり、さすがのミーもドキッとしちゃったんです。


「あの…」

「あ…(ヤベ見惚れてた)、えーと、ミーなら平気ですー。それよりちゃんと前見て走らないと危険ですよー」

「ごめんなさい。」

「それよりあなたは大丈夫なんですかー」

「うん!わたし、じょうぶなの!!」


ドキ…


にへっと笑うその子につられてミーの幼い心もときめいた。

「この辺の人間なんですかー?」

「うん、でももうすぐイタリアに行くの」

「イタリアですか?」

「お父さんのお仕事のつごうなんだって」

「そうなんですかー」

「うん…って、あ!!!!」

地面に座ったままのミーと彼女。
瞬間、彼女の手がミーの膝あたりの地面に置かれ、グイッと顔を近づけてきた。


ドキッ!!



まだまだ恋を知らないミー。
そんなことにも心臓は跳ねあがった。


「ミーくん、あご赤くなってる…

ちゅっ」




ミーは“ミー”って名前じゃないんですよ、とかつっこむ前に
ミーの傷に触れた彼女のくちびる。

ふんわりとシャンプーの匂いがした。































「おいクソガエル。寝てんじゃねーよ」

ドンっと容赦なくミーの頭を蹴られて目が覚めた。

「いって…何すんですかー」

「これから任務だっつのに寝てるお前が悪いんだよ、死ね」

「ちっ…」

「舌打ちしてんじゃねー、よっ!!」


ドスドス!


「ゲロッ!任務前に止めてくださーい」

「しししっ、早く行くぞ」





死ね、堕王子と心の中で呟いてカエルの帽子に刺さったナイフを抜きながら、見ていた夢を思い出した。


さっきのは遠い遠い記憶の夢だったみたいで。

あの後彼女は探しにきた母親と去っていった。
(そしてミーは探しにきた師匠に連れ戻されきつい修行を強いられました。)


それっきり彼女とは会えなくて今に至るわけですが、

きっとこんな夢を見たのは昨日、ふらっと寄った下町で彼女を思わせるような黒のロングヘアの日本人をみたせいでしょうか。



今もふと思い出すとドキリと胸が痛むのはきっとあれがミーの初恋だったから。


また会うことができたなら、その時は自己紹介でもしましょうか。







カミサマ、この恋を、

叶えて。





なんて願ったら叶えてくれるんでしょうかー。


*END*

(題は「確かに恋だった」さまより拝借しました。)



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