とある執事の恋愛模様-Love pattern-
□<10章>
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ネイルに、会いたくて出て来たが。
思い当たる数少ない行きそうな場所や、可能性のありそうな場所を探してみても、どこにもその姿は見当たらなかった。
‥やはり、俺1人でどうにかしようなどと、所詮はただの浅知恵でしかなかったのだろうか。
例え闇雲に探し回ったとしても、容易に解決を見込める手立てはなかっただろうから。
だが、そうでもしていなければ、どこか落ち着かなくて。
焦燥感にも似た寂しさが、そしてネイルの事ばかりが頭を離れず、訳も分からない不安と苛立ちだけが募る。
‥だけれど、どうにも出来なくて。
俺は、すっかり冷めきったハンバーガーとドリンクを、
空腹を訴える胃に−実際は食欲など沸いているはずもなかったのだが−無理矢理に詰め込み、ブランコから腰を上げる。
入り口近くのゴミ箱に、食べ終えた包装紙とコップを纏めて乱暴に投げ入れるとその場を後にする。
半ば自棄気味に、誰でも良い、誰か適当な使用人でも呼びつけて迎えを頼もうと、
ポケットから携帯電話を取り出し、屋敷の番号をプッシュした。
だがこの場所へは、ネイルとしか来た事がなかったため、他の使用人には馴染みのない場所だ。
コール音を耳にしながら、どこか目印になるような物はあっただろうか。
そう思いながら、何気なく周囲を見渡した刹那−。
「!!」
見間違うはずもない、その姿が目に入った。ネイルだ。その傍には何故か、もう1人の"誰か"の姿があって。
‥そしてその人物もまた、見違えるはずもない俺のよく知る人物で。
‥‥どういう、事だ?
何故、ネイルが、"あいつ"と一緒にいる?
『−はい、ピッコロ様。アランでございます。いかがなさいましたか?』
その時、漸くコールが繋がったらしく、携帯を通じ耳慣れた使用人の声が響く。
だが、やっと見つけたネイルの姿と、その傍近きにいる人物の存在の謎と、俺は見逃す訳にはいかなくて。
「‥‥‥悪い。一旦切るぞ」
『え?ピッコロ様?何かございましたか?ピッコロ様−』
こちらからかけたはずの電話だったが、一言詫びを入れた後に切り、
携帯をポケットに捩じ込むと、見失わないように急いでその後を追う。
ネイルとその人物は、公園近くの賑やかな商店街を抜け、何やら人通りの少ない道へと消えていく。
その動向に、更に疑問が深まる。この奥に、一体何があるというのだろうか。
訝しみながら、更に2人が消えた後を追い、角を曲がったその瞬間−。
「!!?」
その情景に、思わず固まった。
‥ネイルと、別の男とが抱き合い、キスを交わしていたその光景に。
「‥‥‥ネイ‥ル‥‥?」
‥まさか。
‥‥‥そういう、事だったのか?
ネイルは、俺に対して背を向けるようにしていたために、その表情は窺えないでいたが。
すると、状況が飲み込めず、呆然と立ち立ち尽くす俺に。
ネイルではないその人物が顔を上げ、
何やら不適にも見える嫌な笑みを含ませた顔でゆっくりとこちらに視線を向けた。
「‥よぉ、元気してたか?‥‥‥兄貴」
派手に着飾った服や装飾品。
俺と瓜二つの顔。
「‥マジュニア‥!」
それは、
もう随分と昔に父から勘当され、絶縁状態となっていたはずの俺の双子の弟だった。