桜からの手紙
□たった一つの命
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『……………咲かないな……』
碑文ヶ丘高校にいつものように訪れた自由は麻里子の部屋から依然として咲かない桜の木を眺めていた
ついに3月に入り前田先生の生徒が卒業するまであと2週間という所まで来ていた
『こればっかりはどうしようもないからな………』
「おっ今日も来てたね」
『どうも麻里子先生』
「あっ名前呼びに変えたんだ!」
『はい、もうしてもいいかなと思いまして』
「ふふ…ありがと♪」
麻里子先生は自由にお茶を淹れてくれた、それをゆっくり飲みながら再び桜の木に視線を移す
「まだ咲かないねぇ〜」
『このまま咲かなかったら……前田先生残念がりますね』
「そうだね、前田先生の命をいつまで持つか分からないし………」
『前田先生に見せたいですね……桜が満開に咲いた木を』
「私もそう思うよ、でもこればかりは自然の力だけが頼りだからね」
『ですよね………あっそろそろ由紀と変える時間なので俺はこれで』
「うんっまた明日もよろしくね」
『はいっ』
麻里子先生に一礼して自由は教室を出た、そして由紀が待っている校門へと向かう