解鎖

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目が覚めると俺は随分豪華で大きいベットの中だった
いつのまにか寝ていたらしい。

奴隷にこんなベットを…
そう思いながら体を起こす
「…っ」
背中が痛んで、鞭で打たれたことを思い出し
小さく溜息をついてそこへ手を伸ばす

「…っ?」
そこには包帯が巻かれていて、
治療が施されていた。
ベットに治療…やはりあの金持ちは可笑しい

そう思っているとガチャとドアが開いた
…彼だった。
彼は俺の顔を見て少し驚いた表情を見せると
丁度部屋の前を通りがかった使用人に声を掛けた。
内容は俺の耳まで聞こえ無かったが、
使用人は彼に頭を下げてから少し不服そうな顔で反対方向へと歩いて行った

「…」

扉を閉めてから再びこちらを向いて歩み寄ってくる
慌ててベットから下りようとするが、
傷のせいで体が上手く動かず、彼がこちらに来る方が速かった

「動けるか?」

奴隷にそんな質問するなんて…
そう思いながら頷く

「…喋れないのか…?」
その口調から、怒っているのかと一瞬びくりとしたが
その顔は少し悲しげで、怒っているわけではなさそうだ。

「い、いえ…」
起きたばかりでガラガラな変な声だが、
誤解されるよりはマシだった

「っ、すまない…」
俺の酷い声に申し訳なさそうな顔で横にあった水差しからコップに
水を注いで俺に手渡した

「あ、ありがとうございますっ」
慌てて受け取り飲み干した
コップを受け取った彼は少し微笑んでそれを横の台に置いた

「名前を聞いても良いか?」

「は、速水、鶴正、です…」
名前など、書類に載っていただろうに…

「速水…」
彼は呟くように復唱するとベットの側に置いてあった椅子に腰掛けた

ハッとする
奴隷の自分はベットに座っているじゃないか
慌ててどこうとすれば彼はいい、とだけ言って静したあと、
「リクと言う…」
彼は独り言のように名乗った

「リク様」
扉の外から声がかかり、入れと短く彼が言うと
使用人が数人、食事の用意を部屋に運び込んだ

先程の使用人に頼んだのはこれか…

確かにいつから寝ていたのか分からないが、
目が覚めたばかりで腹は減っていた。

使用人たちは食事を運びこむとさっさと部屋から出て行った
「…食べろ」
言葉はきついが、それは優しい言葉の掛け方だった
ゆっくりと食事に手を付ける
一口食べてしまえば、食欲がわいてきて
どんどん口に入って行った
奴隷になってから…
いや、生まれてから食べたこともないようなご馳走ばかりだ
あっという間にからになった器達を見て彼はまた微笑んだ

「あ、の…リク、様…」

「っ」

そう名前を呼ぶと、彼は眉間にしわを寄せ、
不服そうな顔をした

「っ?!」
俺、何か悪いことをしただろうか
どうしようこのまま殺されるかもしれないなんて悪い想像が頭を駆け巡る

「…様呼びは…やだ」

「へ…?」
俺の予想に反して
拗ねた子供のような彼の言葉に
思わず間の抜けた声が出る
「様呼びは…嫌だ」

「じゃ、じゃあどう呼べばっ」

「…呼び捨てで良い」
少し考えてからそう言った彼に、自分の耳を疑う

「ど、奴隷の俺がっ!買い手である主をそのような!」

「…僕は…奴隷なんていらない」


いらない…?
それは俺がいらないってこと…?
じゃあどうして俺を買って…
なんで

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