短編

□外眼中
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照りつける日差しの中、サッカー部は今日も今日とて練習をしていた

「あっつー」
そう言ってタオルで仰いでいると、横からスポーツドリンクが出現した
「ほらよ」

声がして横を向けば、水鳥がニカッと笑っていた
「わぁ、ありがとう!」
そう言ってドリンクを受け取ると、水鳥は私の隣に座った



「よし、休憩!」
神童がそう言って皆が疲れた表情でベンチや水道へと歩いて行った
「先輩!」

切羽詰まったそんな声が聞こえて顔を向ければ、そこには速水と見知らぬ女の子
速水を先輩と呼ぶあたり、恐らく一年生だろう

「好きです!返事はいつでもいいですから!!」
そう言って女の子は走り去っていった

なんとまぁ
大胆な子だ
こんな皆が聞いているような場所で告白とは





告白?!



「ぇ」
私が放心している間に速水はベンチへと帰ってきていた

「告白、されちゃいました…」
顔を赤くしながら速水が言い、
浜野がからかいだしたのを合図に、皆が騒ぎだした

「こ、く…は…く」


「名前?どうしたんだ?具合でもわりぃのか?」
顔真っ青だぞ!と水鳥が言う
「あ、うん…大丈夫…」
そう言うと、水鳥は無理すんなよと優しく声を掛けてくれた

「…」

よくアニメや小説なんかで失恋して泣くなんてシーンがあるけど、私は何だかよくわからなくて
涙も出ない
やっぱりああいうのは物語の中だけなんだな…
なんて、変な方向に変に冷静な考えが頭の中を飛び交う

そんなとき
ぽすんと軽く肩に衝撃があった
横を見ればいつの間にかそこにいた茜が肩に手を置いていた
「?、あか「まだ」」
茜ちゃんと呼ぼうとして、遮られた
「え?」

「まだ、終わってない」
いつもの彼女からは考えもつかないような気迫で言われ、怯む

少し考えて彼女の言った意味がわかった

まだ速水は返事をしていない
つまりまだ、私にもチャンスがある、と
「え…え!?む、むむ無理「諦めるの?」」

そう言われてハッとする

諦める…?
一年生に譲るの?
どうして一年生に…

そう思いだすと、だんだん腹が立ってきた

どうして一年生に譲らなきゃいけないの?
私は一年のときから速水が好きだったんだ
一年生なんて半年じゃない
好きだった期間が違う
どうしてそんな女に譲らなきゃいけないんだ!

「?名前…?どうかしたんですか?」
そう問いかけてきた速水の言葉が追い打ちを掛け、どうしようもなく腹が立ってきた

「速水!!」

「は、はい!!」

「好きだ!!」

頭が真っ白になった
目の前の速水しか目に入ってこない
ただ、少し離れたところから浜野と倉間の「おー」だとか「だいたーん」だとか言う声が聞こえてきたので後で殴っておこうと思う

「ぇえ?!ぁの…」

「ずっと!1年のときから好きだった!!サッカー部のマネージャーやり始めたのだって速水がサッカー部入るって知ったから!だから!」

ふわり

そこまで言うと、暖かい何かに包まれた
「好きです」

「ぇ」

「俺も、ずっと前から…好きでした」



外眼中


我に返って皆に見られていることに気付いて二人して真っ赤になって慌てだすのは少し後

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