短編
□頭撲錯覚
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「私南沢が好き」
サッカー部を見に行こうなんて、サッカーに興味の無いこの友人が言いだすはずが無いとは思っていた
思っていた、が
「へー、私は苦手だな」
そう返すと、彼女は不機嫌そうな顔をした
「えー!なんで?!」
…なんで…?
仮に私が南沢のことをかっこいいとか言ったらその場合、また怒りだすのだろう
渡さないからね!!
とかなんとか言いながら
…いや別にいらねぇよ
「何で、ってナルシストだし、なんか雰囲気…?が苦手」
その言葉に言い返そうとする彼女を遮って私は立ち上がった
「さて、私はそろそろ行くよ部活あるし、サッカー部に用ないし」
「えー!?なんでー?バスケ部、だっけ?そんな大事なのー?!まだいーじゃんか!!」
彼女が私の手を掴んで引き止めようとした
瞬間、サッカー場の方から南沢!!とか叫ぶ声が聞こえて、そっちを向くと、誰かのボールが南沢の頭に当たったらしく、南沢がチームメイトに囲まれていた
彼女は私を置いて急いでそちらへ向かった
「はぁ…」
南沢だけじゃない。
私はあいつも苦手だ
大体バスケ部だっけ?って…あんた仮にも友達なんだから部活くらい覚えておけよ
てかそんな大事なの?てあんた部活が大事じゃない奴がわざわざ部活入るかっての
あーもう
「ナイスシュートツカサ」
先程の奴にイラついて力任せにシュートを決めた
部活が終わり着替えて校門へと向かうと門の横に男子がもたれかかっている
「?」
まぁわたしには関係が無いのでそのまま通り抜ける
…ことはできなかった
もたれかかっていた男子が私の腕を掴んできたのだ
「…何?」
あ…
男子が顔を上げて気付く
南、沢…?
「好きだ」
「は…」
今こいつ何て言った?
「お前が俺のこと嫌いってのは知ってる…が」
こいつ今何て言った?!(二回目)
「ちょ、ちょっと待って!え?あんた正気?ボール当たって可笑しくなったんじゃない?精神科行きなよ!」
「…正気だよ」
何だか睨まれた
すっごいガンとばされた…
「…ていうか、私があんたのこと嫌いなんて…いつ言った?」
「…あいつだよ、ほら、お前の友達のあの女に告られて…俺はお前の…名前ことが好きだからって言ったらあの子は俺のこと嫌いだからやめろって…」
「あーあいつか…」
あいつでわかる私も凄いけど、こいつ、自分に告った女をあの女扱い…
まぁしかし
「フッて正解かもね、性格悪いし」
そう言って笑うと、南沢は目を丸くした
「友達じゃねーの?」
「表面上はね」
そう言って笑うと、南沢もなんだそれと言って笑った
「それで、返事は?」
うわぁ…上手く話そらせたと思ったのに
「やっぱ精神k「正気だっての」」
「…友達からで、お願いします」勇気を振り絞って言葉を出すと、南沢はニヤリと笑っていった
「ふーん…まぁいいや、惚れさせてやるから」
そう言った南沢に不覚にも顔が熱くなった私を殴りたい
頭撲錯覚
そんな言葉はありません。