ゴミ箱

□手
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彼は自分の部下を亡くしている。
彼のせいで死んだと聞いた

正直なところ私も深く事情を知らない
彼はあまり喋らない
ショックでその時の記憶を失くしているのだそうだ
まぁもともと彼を良く話す方ではないから、
どれくらい彼が変わってしまったのかは分からないが


かく言う私も部下を亡くした
私のせいではない
現在。今
亡くしたばかりだ

もう一度言うが私のせいではない

目の前には変わり果てた部下たちと、
敵軍の刃先が迫っていた

「何やってんだ」

私を殺そうとした敵が荒々しい声とともに倒れた

「フリッ…ピ…?」

目の前にいるのは目つきの悪い男だった
彼はもっと優男だったと思ったが
しかし、服、髪の色、ナイフを見れば、それは紛れもなく彼だった

「おい」

その一言で現実に引き戻された
「は、はい」

「コレお前のか?」

コレ、と言いながら彼は私の部下だった肉片を足で軽く蹴った
「は、い」
そうでしたけど
過去形でそう言うと、彼はニヤリと口角を上げた

「俺の手になってくれよ」

「手…?」
ふと彼の手を見ると、包帯でぐるぐるに巻かれていて、
怪我していることが分かった

「分かりました」
元々彼がいなかったら今ここで私は死んでいた
彼について行くのには何の不満も無かった



この人に殺されてもいいとも思った

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