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□一週間ぶりの日常
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そして、立ち上がり手に持つそれの向きを変え裏返した物を柏原に向ける。
その動作を少々疑問に思いながらも柏原はそれを受け取った。
「他人の趣味をとやかく言う気はないが、程々にな。」
「え?」
「然して、我には他人の趣味を公言する趣味も持ち合わせてはいない。」
「……。」
何やら、怪しい雲行きを感じた柏原は手にある物に視線を移す。
それが明らかに写真を印刷するための用紙であることに気がついた瞬間、さぁっと血の気が引いていく。
そして、もしかしたら違う写真かもしれないと言う淡い期待はを抱き、それを勢いよく裏返す。
そんな期待も尽く外れ、案の定それは彼の中で既に黒歴史として刻まれた代物だった。
「ではな。」
「ま、待って下さい伏見さん!違います!!誤解です!!思い違いです!!」
自室に戻ろうと踵を返す帳を柏原は全力で止めにかかる。
「それはどう見てもお前だが?」
「確かに……俺ですけど。でも違うんです!!」
「……人の言葉には考え方や好みなどが各人それぞれに違っているがそれを認めるのも大切だと言う意味の言葉が多数ある。」
「?はぁ。」
「詰まるところ、お前にその様な趣味があろうとも、それを恥ずことはないだろう。
…………恐らく。」
「ですから!違うんです!!恥じてるとかじゃないんです!!俺にはそんな趣味はありません!!って何で目を背けるんですか!?」
本日二度目となる柏原の弁明が終わったのはそれから三時間後のことだった。
そして、写真がその日のうちに紀伊の手元に戻った事は言うまでもないだろう。
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