第三部
□束の間の
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サクラside
シゲルが飛んでいき、姿が空の彼方へと消えていくのを見守った。
そこでようやく、ナルトが手を付いた。
空気は重い。
地面に頭を打ち付け、嗚咽を漏らすナルトに言ってやった。
「泣いたって、サスケ君は帰ってこないでしょ!」
当たり前だ。
だって彼は選んで彼方に居たのだから。
目元がじわりと熱さを持つ。
「私も、シゲルもいる!一緒に強くなる!!」
そうだ。まだ終わりじゃない。
……だけど。
先程のシゲルの姿を思い出した。
まさか、シゲルも同じだったなんて思いもしなかった。
彼まで、何処かへ行ってしまうのだろうか。
「時間…、あと半年近くはあるんだよね…」
流れた涙を拭っているとサイがそう言った。
「二人より三人、三人より四人の方が良いに決まってる。それに、ボクは結構強いからね」
慰めのつもりだろうか。
あまりの下手くそな慰めの言葉に思わず口許が緩んでしまう。
ナルトも涙を拭い、顔を上げた。
「…ありがと、だってばよ…」
木ノ葉に戻ると、すぐに師匠である綱手様に呼び出された。
報告その他諸々は既にシゲルが全て終わらせたらしく、自分達がしたことはシゲルの報告と差異がないかの確認だけだった。
最もそのシゲルは次の任務へと駆り出されたらしい。
ちょっと、いや、さすがに休憩も無いのは可哀想。
「そうか…。で?」
お前達はどうするんだ?と綱手様の視線が言う。
それにナルトが答えた。
「オレ達は諦めねェ!」
絶対にサスケを連れ戻す、そういった意志がナルトから感じられた。
綱手がそんなナルトを見て、「フン」と、優しく鼻で笑った。
解っていた答えだけど、やはり真っ直ぐさは変わらないな、と言うところだろうか。
「では、これよりお前達にはすぐに次の任務を言い渡す」
……なるほど、私達にも休憩は無いみたいですね。
□□□
サスケ遭遇事件から五日程経った。
オレは任務を終え、ヨロヨロしながら木ノ葉へと戻ってきた。
ここ最近ハード過ぎるだろ。肉食いてえ肉。肉肉。肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉。
肉肉と頭のなかで焼き肉と白米を掻き込んでいる妄想しながら鳥に変化して火影邸へと飛んでいれば、下の方に私服ナルト、サクラ、サイがいた。
新生7班は本日お休みらしい。羨ましいことだ。
ナルトの癒しを求めて、空を旋回しながら聞き耳を立てる。
何て事ない平和な会話。
サイも人と打ち解ける方法を探しているらしく、ほのぼのとした空気が流れている。
先程までドロドロしていた心が浄化される。
影分身を派遣して癒しを体一杯に充電したい気分だ。
三人は今はアダ名の話をしている。
特徴で付けるのが良いみたいな流れになり、ならばとサイが試しにサクラへと付けてみたのだ。アダ名を。
「ありがとう、コツが分かったよ…。ブス」
数瞬、時が止まった。
「しゃーーーーーーんなろーーーーー!!!!」
「サイ!そりゃブッ飛びすぎだってばよっ!!!」
「え?何がです??」
スババーーーーン!!!と痛そうな音が響き渡る。
「………、早く報告行こう」
目の前で起きた惨劇を見てないことにして、オレは火影邸へと急いだ。
火影邸へと付けば、暗部同僚の朧狼(ろうろう)がいた。
仮面は青い狼。
オレの3つ上で、なんとなく気が合う奴だ。
水遁使いだからだろうか。
窓から中へと入って変化を解いた。
「おー、朧狼。生きてるな」
朧狼がこちらを見る。
「お前もな、閠影。報告か?」
「そ。そっちも?」
「こっちもだ」
互いに多忙な身だ。こういった会話だけでも嬉しい。
「お前からで良いぞ」
「え、良いの?」
まさかの報告の順番を譲って貰った。
凄く嬉しい。
すると朧狼は「おう!」と返してきた。
これはその内なにかでお礼を返したいところだ。
「ありがとうな!んじゃお先に」
呼吸を整え、扉を開く。
「失礼します」