第三部

□帰還
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朝。

日が上るちょっと前に目が覚め、上体を起こした。
時計を見れば5時。睡眠時間は約二時間弱か。

欠伸をしつつ隣を見ると、ナルトが涎を垂らして寝ている。


「……あー……、狭かったぁ……」


身動き出来ないわナルトは抱き枕と間違えで抱き付いてくるわ。子供の時はそんなでもなかったのに。やっぱり身長伸びたし体重も増えたからな。

でも久し振りにゆっくり眠れた気がする。

普段は先輩やストーカーのせいで安眠できないからな。

ベッドから降りて秘密部屋を覗く。すると、ちょうど起きてた分身が此方に気付いて術を解いた。体の中にたっぷり眠った経験が還元される。
仕事柄、出来うる限り睡眠をとって肌艶を良くして常に万全でいなければならない。


「ふぁぁ……。あー、でも経験値よりも本当にしっかり寝たい…。よっと」


ぼんっ!と小気味良い音を立てて影分身が現れる。


「じゃあ、睡眠よろしく」

「あいよー、頑張ってな」


まだスヤスヤと寝息を立てているもう一人の影分身を羨ましい目で見てから、部屋へと戻った。














香ばしい臭い。
鼻をひくつかせ、意識が浮上していく。

ぐうう、お腹の虫が飯だ飯だと音を鳴らせて知らせてくる。

良い匂い。

もぞりと寝返りをうち掛けて、はっとナルトは目が覚めた。

安心する懐かしい匂いに二度寝するところだった。
布団を掴み、暫し見つめてもう一度嗅ぐ。うん。なんで此処にいるんだろうと思ったけど、カカシ先生の訓練に疲れて寝落ちしてしまったのか。

服は恐らく彼の物に着替えさせられているし、心なしか体がさっぱりしているところを見るや、タオルか何かで拭かれたっぽい。

あああ、帰ってそうそう面倒掛けてるー!!
せっかく修行の旅から戻ったから、再会の時くらいはかっこ良く決めたかったのにー!!

昨日のサクラの言葉とシカマル達の姿を思い出して軽く落ち込んだ。
これぜってー変わってないとか思われてる…。


「いや、とりあえず起きないと」


ふんっと勢い良く起き上がり、台所へと向かう。せめて手伝いはしないと!!


「シ──」


名前を呼び掛けて、一瞬間違えたかと思った。
台所に立っている彼は、すらっと背が伸び、程よい筋肉がついていて。更に伸びた髪が、緩く纏められていた。
エプロン姿で一瞬知らない女性が立っているのかと思ってしまったくらい、彼はだいぶ変わっていた。


「──ゲル……?」


だから名前を呼んでみたものの、少し不安だった。

違う人だったらどうしよう。と。


「ん?ああ、起きたか」


でも、振り返った彼を見てホッとした。
だいぶ成長した彼は、それでも当時の面影を残したままこちらを見て笑った。


「ナルト、ご飯にしようぜ。顔洗ってこいよ」


そして、口元を指す。


「涎の跡付いてる」


オレの馬鹿。
初っぱなからカッコ悪い……。
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