第三部
□大嵐
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ひとまずカブトを木でぐるぐる巻きにした。
さすがのこいつも脱出には数分掛かるだろう。まぁ、それは単身で放置した場合だから、木遁の分身付きだともう少し時間が掛かるだろう。
「サイ…、お前、一体…」
ナルトが意味が分からないといいたげにサイに問うと、サイが答えた。
「君が何故そこまでサスケ君との繋がりに拘るのか…、その繋がりってのが何なのか、知りたくなってね…」
ほう。根っからの根が変わるもんだな。
サイは目を伏せる。何かを思い出しているみたいに。
「君達から見たら…、…ボクも兄さんとの繋がりってのを消せないでいるらしい。……ボクにとってそれがそんなに大切なモノなら、君とサスケ君の“つながり”を見れば何かが分かるかもしれない。そう思っただけさ」
なるほど。
確かに客観的に見れば新しい発見があるかもしれない。
それでどんな風に変わるのかなと期待を寄せつつもオレは、最後のサスケを思い出していた。
同じ復讐者として生きる道を選んだオレとしては、何ともいえない気分だった。
ククク、と、突然カブトが笑いだす。
サクラがムッとして「何がおかしいの!?」と怒っている。
すぐさまヤマト隊長がサスケの在りかを問いただすと、意外にもカブトは答えた。
「今頃修行を終えて、さらに奥の部屋にいるだろう。ここではいくつもの部屋がバラバラに並んでいる。手当たり次第に調べれば見付かるかもね。
ただ下手すると、藪をつついて蛇を出しかねないよ。大蛇丸様の居室もそこにあるからね」
「ずいぶん太っ腹じゃん。忠告までしてくれるなんてさ。もしかしてどーせ返り討ちに遭うとか思ってる?」
「まぁね」
本当に素直だな。
ずいとヤマト隊長がカブトへという。
「それこそ、やってみるまで分かんないよ」
ということで分かれることになった。
構成はこんな。
ヤマト隊長とサクラ。
ナルトとサイ。
オレ。
「オレぼっちですか?」
「不満かい?」
「いえ…」
コッソリスマイル止めてくれませんかね。
ま、意図は分かってる。
単独行動と見せかけてナルトの護衛ですよね。
「何かあったらチャクラを練るんだ。それだけで体内の木の種が反応を示すから、すぐに駆け付ける」
「「「了解!」」」
ナルトとサイが猛ダッシュでフロアを駆け抜け、ガチャガチャと部屋を次々に開けていく。
いやお前、焦るの分かるけど警戒しろよ。
後ろから追い掛けているサイが疲れているの気付けよこの体力バカ。
と、言いながら頭をひっぱたいてやりたいけれど、いま後ろからこそこそ尾行しているからそうもいかない。
あ、ナルト倒れた。
どうやら九尾化のダメージを引きずっているらしい。それを珍しくサイが気を使ってナルトを起こし、壁に凭れさせてくれた。
強制的な休息を取らせてくれたらしい。
これでやっとオレも休憩できる。
同じく壁にもたれ掛かり耳を済ませる。
向こうからはオレの姿は視認できない。
爬月族の術、擬態鏡で周りの風景と同化しているから、音も相殺すればバレない。
水分補給しながら二人の会話を聞く。
どうやらナルトはサイのお兄さんに似ているらしい。口やかましい、慌てん坊、品がないうえにチン○。お前お兄さんのチン○ハッキリ覚えているのか。オレなんかナルトのチン○うろ覚えなのに。
(ん?)
急に無言になったから二人の方を見ると、サイが凄い勢いで絵本を描いていた。
どうした急に。
「……思い出した……。思い出したんだ……」
泣き出しそうなサイの声。
「…兄さんに見せたかった……、二人の…夢の絵を…」
唖然とした。
あのサイが泣きそうな顔で笑っていた。
「……、!!???」
ビクッと体が反応した。
この気配は!!
すぐさまチャクラを練りヤマト隊長へと信号を送る。
大蛇丸がチャクラを練る気配に気付いてこちらを見たが、もはや関係ない。
二人のすぐ側まで歩を進めると、ようやく二人も気付いた。
「さて……、サイ…貴方はどちら側につくのかしら?」