第三部

□大嵐
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ナルトがやって来た。
これでカカシ班のメンバー9割が揃った訳だ。
 
冷えきった視線がナルトを見詰めていて、ナルトもサスケを見上げている。
感動の再会には程遠い。
…現実ってのは本当に無情だな…。
 
 
「ナルトか…、お前までいたのか」
 
「……」
 
「なら、カカシもいるのか?」
 
「!」
 
ヤマト隊長がやって来た。
 
 
「カカシさんじゃなくて残念だけど、ボクが代理だ。これからカカシ班は君を木ノ葉へ連れ帰る」
 
 
ジッとサスケはオレ達を見回す。
 
 
「カカシ班か…」
 
 
一体どんな気持ちで呟いたんだろうな。
 
 
「ん?」
 
 
視界の端でサイが動いた。
何だろうと見てみたら、サイがサスケに向かって刀の切っ先を向けていた。
 
いやなにしてんのお前。
 
 
「サイ!あなたやっぱり!」
 
「ステイ!サクラステイ!まてまてまて!拳まてまて!」
 
 
拳グーのサクラとサイの間に入って必死に宥める。
待ってね待ってね、何か理由がある筈だから。
ヤマト隊長が視線で「シゲルくん?」と言っている。
ヤマト隊長に向けて手暗号で「違うんですこの子やろうとしている事とモーションがズレているんです!」と伝えた。
多分彼の今の行動は、ああすることによってサスケの注意を引いて言葉を聞いて貰おうとしている…多分。
 
間違っていたら秒で止めます。はい。
 
内心冷や汗流していると、サイの目論見通りサスケがサイの方へと意識を向けた。
 
 
「そいつがオレの穴埋めか?……ナルトとオレの繋がりを守りたいだのなんだの言ってたが…」
 
 
サスケが心底呆れたような表情になった。
 
 
「また、ぬるい奴が入ったもんだな」
 
 
え?とサクラがサイを見詰めた。
 
予想外だったんだろう。
誤解するのも仕方ない。
何せこいつは行動がとんちんかんだらけだから。
 
 
「確かにボクの極秘任務の命はサスケ君の暗殺だった……」
 
「おい」
 
 
言っちゃダメだろ何言ってんのお前。
仮にも暗部お前。
思わずサイをガン見してしまった。
報告もんだぞお前。
しかしサイの独白は止まらない。
 
 
「けど、命令はもういい」
 
 
いいのかよ反抗期かこいつ。
「今は自分の考えで動きたい。
……ナルト君が思い出させてくれそうなんだ…ボクの昔の気持ちを…。
何かとても大切だった気がするものなんだ…」
 
 
思わずヤマト隊長を見た。
困惑しながら首を振られた。
…うん、もういいや。
やるようになれ。
 
 
「ボクは君の事をよく知らないけど、ナルト君やシゲル君、サクラさんが必死に君を追うのには何か訳がある…。君との繋がりを切るまいと…、繋ぎ止めておこうと必死になっている…。ボクにはまだハッキリとは分からない。けど、サスケ君、君には分かってるはずだ」
 
 
そうだろ?と、サイがサスケへ視線で返答を求めると、全くもって不愉快だと言わんばかりサスケは口を開いた。
「ああ、分かってた。だから断ち切った。
 
 
オレには別の繋がりがある… 兄との憎しみっていう繋がりがな…」
 
 
すい、とサスケの視線がこちらに向いた。
 
 
「なぁ?シゲル…、お前は理解していると思っていたんだが…」
 
「……」
 
 
あの日、あのときの情景が浮かぶ。
同じ復讐者同士で、それは今も変わり無かった。
 
 
「お前の噂は聞いている…、随分と汚れたみたいだな…」
 
「はっ…」
 
 
それをお前が言うか。
 
 
「それはお互い様だろ?」
 
 
綺麗なままでいられる奴なんてほとんど居ないのだから。
しかも復讐を糧にしている奴が綺麗なままでいられるわけがない。
微かにサスケの口許が嗤った気がした。
次の瞬間には元の無感情な感じに戻っていたが。
もう関心はないと、再び視線をサイに向けた。
 
 
「いくつもの繋がりは己を惑わせ、最も強い願い、大切な思いを弱くする」
 
 
だからこそ、暗部には身寄りの無い者が多く選ばれる。
何故なら後ろ髪を引くものが居ないのだから。
だけど、それはきっとナルトには理解できない世界だ。
 
 
「……それなら…、それならなんであの時…」
 
 
ぐっと拳を握り締めたナルトが声を張り上げた。
 
 
「オレを殺さなかった!?それで断ち切ったつもりかよ!サスケ!!」
 
「……」
 
 
はぁ、と、サスケが溜め息を吐く。
 
 
「…簡単な理由だ…、お前との繋がりを断ち切れなかったんじゃない…。
あいつに聞かされたやり方に従って、力を手にするのが癪だっただけだ」
 
 
あー、と思わず心の中で変な声を漏らした。
 
以前、イタチと接触した時、何かされていたのを覚えている。
もしかしてあの精神汚染、幻術下で何かあったのだろう。
オレも暗部での幻術耐性訓練でさんざん頭弄られて吐いた。
嫌な思い出だ。
 
 
「どういう事だってばよ!?」
 
「お前に説明する必要はない…、ただ、お前に言える事は……」
 
空気が変わった。
 
 
「あの時、お前の命はオレの気まぐれで助かっただけだと言うことだ」
 
「!!」
 
 
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