第三部
□束の間の
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焼き肉Qに来た。
「シゲル、遅いってばさ!」
「ごめんごめん。…、あれ?シカマルは?」
みんなもう焼き始めているのに、いつも居るはずのシカマルの姿がなかった。
せっかくだから話したいことがあったんだけど。
「サクラと同じこと言ってるってば」
「え、そうなの?」
オレの質問にはチョウジが答えてくれた。
「親父さんと角取りに行かないと行けないから帰ったよ」
「なるほど」
確かに医療班から兵糧丸の作る材料の鹿茸(ロクジョウ)が足りなくなってるって言ってたな。じゃあそれか。
奈良一族はこの木ノ葉の医療で用いる生薬、鹿の角、鹿茸の市場を独占している。
鹿茸はチャクラの増強や、経絡系伝達向上などに使われ、無くてはならない生薬だった。
最近キナ臭いし、噂によればあちこちで襲撃が増えているから兵糧丸を大量生産しなければならないから通常よりも不足気味なんだとか。
まぁ、居ないのなら仕方がない。
後で聞きに行くか。
ナルトの右隣に座り、箸を取り、皿に乗った肉を網に乗せていく。
「よーし!シカマルの分も食べるぞー!!」
そうチョウジが意気込んで焼けた肉を取ろうとすると、すかさずイノがストップを掛けた。
「ってチョウジ!食べる前にサイくんに私たちの自己紹介しないとさーあ」
「ああ、そうだねェ…」
寸止めされたチョウジはソワソワしながらもサイの方へ向く。
「……どうも…」
「?」
なんか、サイの様子が変だ。
前に見た時みたいにハキハキとした話し口調ではなく、何やら考え事をしながら話している風だった。
「えっと、ボクは秋道一族の秋道チョウジ。よろしく。えっと、サイだっけ」
「よろしく…、えっと…。……、デ──」
「!?」「!」「!」「!!」
ナルトが咄嗟に身を乗り出してサイの口を塞いだ。
ナイスだナルト!!
すかさずオレは高速で指で机を叩く。暗部で使用される特殊モールス信号だ。
それでチョウジの前で“デブ”という単語は使用禁止事項だと伝えると、視線でこちらに「?」と投げ掛けてきた。
だめだこりゃ。
「今…なんか言いかけた?」
「あはは…いや何も…」
サクラが慌ててフォローした。お疲れ様です。
ちらっ、とイノがこっちを見たので、笑顔で誤魔化した。
「……えーと、私は山中花店の娘で、山中いのって言います。よろしくー!」
気を取り直して次はイノが自己紹介。
大丈夫かなとハラハラしながら見守る。
もしもの時は足を思い切り蹴って黙らそうそうしよう。
「よろしく…えっと、……。 美人さん 」
時が止まったかと思った。
突然どうしたこいつ。
「何でイノン時はそうなんのよぉー!!!しゃーーーーんなろーーー!!!」
「うおっ!?」
「サクラちゃ……!?」
「うぐっ!!??」
サクラの飛び蹴りが炸裂し、サイが盛大に飛んだ。
わあ。
もう、ほんきでこいつがなんなのかわからない。
サクラはオレとナルト+ナルト影分身で必死になって止めるまで暴れ、条件反射で反撃されてオレも頬を腫らすことになるのだった。