短編BOX

□カカシ先生の誕生日である。
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今日はカカシ先生の誕生日である。

「あーーー……。どうすっかなー……」

ナルトは旅立ち、サスケは里家出中、サクラは綱手様に猛烈にしごかれている中、比較的カカシ先生の身近に位置しているのはオレ一人となってしまったこの一年。
第七班空中分解状態において、中忍となった今でも七班の自覚はあるオレは、班長であるカカシ先生の生徒として繋がっている。
まぁ実際修行を付けて貰っているし、口寄せの技に関して言えばオレとの口寄せと似ている分吸収するところが多いから何かと見て貰っている。

あとは、なんか寂しそうだし……。
よくよく考えてみたら、七班結成で半年経たずに即解散は結構悲しい。
だって半分は里外だぜ?しかも連絡不可。なんなの?って感じ。
そんな愚痴を定期的にサクラと言い合ったりしているこの頃。──話が逸れた。

そんな訳で、偶然たまたま三日前からお休みが取れたオレはカカシ先生の誕生日をどうやって祝おうかを悩んでいるのだ。

無難にプレゼントとといっても、ナルトのように簡単ではない。
何せ未だに私生活が謎で埋め尽くされているカカシ先生の好みがいまいち良く分からないのだ。
辛うじて判明したのが素顔と好物くらい。
サンマの塩焼きと茄子の味噌汁が好きとか、素朴すぎる。
しかしそれだけだ。
趣味もイチャパラしか判明してないし、買ってやろうにもカカシ先生は全部持っているしグッズもそんなには無いからきっとコレクター済みに決まっている。
鞄やアクセサリーなんかは忍には使いどころのないものだし、服も年がら年中真っ黒なので選びようもない。
詰みである。

もちろん長年付き合いのある人達にも聞いてみたが、参考になるか微妙なものだった。


アスマ&紅先生
「巻物(収納用)をあげるのはどうか?」
「あんな高級品にはまだ手が届かないっす」
「あー……」「そうよね…高いわよねあれ……」


ガイ先生
「いつも読んでいるあの本はどうだ!」
「センセー、あれ18禁なんでオレ買えないです」
「そうか、忘れてたがお前14才か」
「ウイッス」


綱手
「私はあげたぞ。休日」
「綱手様それプレゼントですか?」
「休日はプレゼントだろ?」
「……そうですねはい」



なんとなくいけそうなのはアスマ&紅先生の提案だったので、とりあえず頑張った範囲で購入した梱包された忍具セットをを見詰めた。

「………どうなんだろうなこれ」

受け取り方によっては更に働けと言っているようなものではないか?

やはり別のやつが良いのではないか。
あげるのならば、当然だが本人が一番嬉しいのが良い。

「それが難しいんだよぉ……。……ん?」

ふと見詰めた先に、素晴らしいものがあった。

「そうか!これがあったか!」

オレはすぐさま双子狼を呼び寄せ、カカシ先生を捕らえるべく解き放った。






一時間後、カカシ先生が赤楽と赤陽に連行されてきた。

「「連れてきた!」よー!」
「ありがとうね。はいこれオヤツ」
「わーい!」
「やったぁー!」

犬用のクッキー詰め合わせを二袋持たせてから帰した。
それにしても追跡が早くなったもんだ。

「で?」とカカシ先生が問い掛けてくる。

「可愛い子使って連れてきて、一体なんの用かな?」

自己鍛練でもしていたのか、ちょっと汚れていたカカシ先生。
誕生日だというのに、がんばり屋だな。

「センセー、お昼まだですよね?」
「? まぁまだだけど?」

ビッと後ろの食事処を指差した。

「一緒にご飯食べません?奢りますよ」






困惑しているカカシ先生の手を引っ張って強制入店。

「いらっしゃいませー!」
「二名です!個室空いてますか?」
「空いておりますよ。どうぞこちらへ」

カカシ先生を椅子に座らせ、自分も着席した。

「えーと…」
「ハッピバースデー先生。とってもおめでたい日ですし、好きなものでも食べていただこうかなーと思いまして」

言いながらオレはメニュー表にあるサンマの塩焼きセット茄子の味噌汁つきを指差した。
それを見てカカシ先生はようやく理解したようだ

「なるほどね」




てん、と二人の前にサンマの塩焼きセット茄子の味噌汁つきが並んだ。

「「いただきます」」

箸を手に取ると、カカシ先生はマスクを下げた。
露になる素顔。
素顔で活動すれば良いのになと思いながら、オレは熱々の味噌汁を啜る。

幸せそうにご飯を食べる姿をこっそりと盗み見ながら、オレはホッとした。
やっぱりこっちが正解だったみたいだ。
買ってしまったこの忍具セットは自分で使おう。

黙々と食べ、お皿にはサンマの骨だけが残った。

カカシ先生もマスクを装着し、食事の終わりを告げていた。
さて、あとはかっこ良く二人分のお支払をすれば完ぺき。


「ごちそうさま。それじゃあ、このプレゼントは貰っていくよ」


そう言いながら、カカシ先生が立ち上がると、何故かその手にはオレのポーチにあるはずの梱包された忍具セットが収まっていた。

「え」

いつの間に!?

慌ててポーチを探るも、無い。
は?いつ盗った!??

混乱している間にカカシ先生が部屋から出ていってしまってた。伝票を持って。

待てえええええええい!!!!

慌てて追い掛けたが、すでにカカシ先生の姿は影も形もなく、二人分のお支払は完了してしまっていた。

「……くっそ負けたぁぁ……」

勝負していたわけじゃないのに敗北感が凄まじい。
来年こそは絶対にスマートに決めて見せるからなああああ!!!!








カカシは部屋に飾られた忍具セットを見つめる。
これは去年、オレの教え子から貰った誕生日プレゼントだ。
あれだけオレを胡散臭い奴認定していた子が、懸命に誕生日プレゼントを考えてくれたことだけでも十分に嬉しいものなのに、更に喜ばせようとしてくるのは愛しさすら沸き上がってくる。

「ふふ、楽しみだな」

今年もシゲルはオレの誕生日を祝ってくれるらしい。
何とかして予定を開けろと念押しされた。
さて、何をしてくれるんだろうか。

期待に胸を膨らませ、カカシはシゲルの指定した場所へゆっくりと歩きだした。



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