短編BOX

□英雄ナルトの誕生日
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ナルトの誕生日はいつも騒がしい。
それは年齢が上がる度に大盛況になり、里の英雄となった今では仲間以外の人達も大々的に祝ってくれるようになっていた。

みんなに囲まれて口々に「おめでとう」と祝いの言葉を贈られている。
嬉しそうなナルトの顔。
オレは近くの建物の壁に寄り掛かりながら、それらを眺めていた。
友人として側に居たいけれど、今はナルトの隣にはヒナタがいる。恋人を差し置いて友人のオレがでしゃばるなんて真似はみっともない。
だから今日はナルトの護衛として近くに居るのだ。

「 シカマル、どんな感じ? 」

オレよりもナルトの近くで護衛を務めているシカマルへと信号を送る。
すぐさま信号が返された。
“異常無し”。
喜ばしいことだ。

そっちは?と来たので、“二人拘束した”と送る。
ナルトは里の英雄だ。誰もが尊敬し、崇める。だけどもそれを良しとしない者も当然居る。
嫉妬とか、妬みとか、純粋な悪意だ。
女に囲まれるのが羨ましいし妬ましい。そんな頭ゆるゆるヤローを俺が隙をついてみっともない所を見せてやれば、女たちは幻滅して去っていくだろうというなんとも短慮で浅はかな考えだ。

そんな下らないことに付き合う必要なんかない。

今まで死ぬほど苦労した分、ナルトには心穏やかに幸せに過ごして貰いたいのだ。

「だから、オレは絶対に赦さないし見逃さないよ」

そうしてまた一人音もなくソレを拘束して、ナルトの周りを平和に保つ。



そんな感じで夜も更け、主役も会場を後にする。
これで仕事はあらかた終わる。

シカマルは会場の後片付けの監督の仕事のため、護衛の仕事はオレに引き継がれた。

眼下では、ナルトとヒナタが幸せそうに歩いている。
良いことだ。

なんの妨害もなくナルトがヒナタを家へと送り届け、ナルトも帰路についた。
これで一安心だ。

後はナルトが無事に家に帰るのを見届けてから仕事場に戻って──

「!」

ナルトがまっすぐこちらを見上げて手招きしていた。
全く。護衛の為にわざわざ梟に変化していたっていうのに。

仕方がない、と手招きされるままにナルトの元へと降りた。

「ははっ!やっぱりシゲルだったってばよ」

手に留まり、カマを掛けられたことを知る。
ナルトの癖にやるじゃないか。ナルトの成長を喜ばしく思いながら変化を解いた。
まだ任務中だから本当は良くないんだけれど、今日くらいは良いだろう。

「人気者だったな」
「ししっ!…でもちょーっと疲れた」
「人酔いか?」
「いや、多分気疲れかも」
「ああ…」

いつもなら気の知れた仲間と気兼ね無く過ごせるが、今日は大勢のファンの前では“英雄らしく”しなければならない。
有名人は有名人であるが故の大変さがあるのだ。

「お疲れさま」
「シゲルもありがとな。朝からずっと張ってて大変だったろ?」
「まーね。でもお陰で危険因子の特定確保が出来て満足だけどね」
「オレは陽動扱い…?」
「得意だろ?」

そう言えば、ナルトは「んーー〜〜……」と何とも言えない声を出して悩みだしてしまった。
相変わらずナルトをからかうのは楽しい。

「ナルト」
「ん?」
「お誕生日おめでとう」

ナルトの目が見開かれ、嬉しそうに微笑む。

「おう!」



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