短編BOX

□強いけど弱い
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気合いを入れて振りかぶった拳はするりするりと避けられて、体制を崩した体は意図も簡単に空中へと放り投げられた。

逆さになった世界でオレを見て笑うのは、小さい頃から俺の師匠をしてくれているシゲルの笑顔で。


「いってぇーーーっ!!!」


どすんと落ちた。
背中に響く衝撃に噎せながら立ち上がろうとしたときにはもう遅く、シゲルにのし掛かられて関節技を決められていた。


「痛い痛い痛い!ギブ!!ギブだってばよ!!」


ばんばん地面を叩いて降参宣言をすればシゲルはしょうがないなと上から退いてくれる。
吹き出た脂汗を拭うために腕をあげようとしたが、決められた腕のしびれが酷くて、反対側で仕方なく拭った。


「ナルトはさ、動作が大きすぎるんだよ、もっと脇閉めて打ち込まないといつぞやのオレみたいに吹っ飛ばされるぞ」


こうやって、とシゲルがその場で正拳突きをする。その突き出される度に布ずれの音が聞こえた瞬間、殴られたわけでもないのに腕が痺れてくるような錯覚に陥った。原因は分かりきっている。いつも腕で防御するからあの痺れが記憶から甦っているのだ。

やってはいるつもりなんだがなと思うけれども、打てども打てどもシゲルに掠りもしないので、やっぱり出来てないんだろうなと納得する。


これでも体術には自信があった。クラスの中では体術は年上の同級生達と比べても上に食い込む事ができるくらいには自信があったのだが、シゲルと試合すると差を見せつけられているような気がした。強いなー。


「あれだったらさ、脚力もあるんだし蹴り技もっと入れても良いんじゃん?」

「蹴り技?」

「そうそう、例えばこんなの」


少し助走をつけて飛び上がり一蹴り、体を捻って二蹴り、そしてさらに捻って三蹴りとそれだけでも演舞のような技を見せられた。どこかで見たことがあるなと思えば、これは以前ズク兄がシゲルに掛けていた技で、一蹴りまでは耐えられたのだが続き様の二蹴り三蹴りで吹っ飛ばされた記憶がよみがえった。


「これ、ズク兄の技?」

「そうそう、よく覚えてたな」

「初っぱなの攻撃で吹っ飛ばされてるの見たらそうそう忘れられないってばよ」

「うわー、そこまで覚えてなくて良いよ…」
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