第一部
□稽古頼み
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本日は一人で登校。家を出るギリギリまでじーちゃんが「一緒にいく!」と粘っていたが、最終的にオレの全力疾走で振り払った。じーちゃんよ、子供には冒険をさせないといけないんだぜ。
ところで。
「ここはどこだろう」
走るのに一生懸命だったもので、周りをよく見ていなかった。気付けば周りは知らぬ景色、なんだよーまた迷子かよー!
ため息をつきつつ見渡すと、昨日見た結い上げ頭を発見。シカマルだ。
この辺住んでるのかな?
ラッキーと心の中でガッツポーズするとシカマルの後を付いていく。よく見ればシカマルだけじゃなくて、他にもちっこいのが二人。ぽっちゃり系男子のチョウジと、あれは恐らく山中いのだな。
シカマル挟んで両端を歩いている。
一緒に登校とか本当仲良いな、流石イノシカチョー。
生イノシカチョー観察を楽しんでいればいつの間にか学校に着いていました。
「おはよー」
「おー」
昨日と同じ席へ腰掛けて、隣のシカマルへご挨拶。一文字だけ返ってきた。
ホームルーム終了後、ツバメ先生がオレに向かって教壇から手招きしていた。
「ツバメせんせーはよーごぜーます」
「おはよう、皆とは仲良くなれた?」
「ボチボチですなー」
「シゲルくんは返答が面白いね」
昨日と同じくふにゃりとした笑顔。とても忍者とは思えない顔だ。
そんな事を思っていると、はいと教科書が手渡される。結構分厚かった。
「昨日借りた本はどうだった?」
「面白かったよ、だけど似たような本借りちゃったから今度は別のジャンルも借りようと思う」
「もう読んだのか」
早いなー、と感嘆の声をあげるツバメ先生。しかしながらオレは元16歳なので誉められるものではない。
「持ってきておいて良かったよ」
言いながら教壇横に置いてあった手提げ袋をオレに手渡す。ずっしりとした重さがあるので、両手で持った。
「昨日言ってた本だよ、と言ってもその一部だけど」
「え、まじ!?」
慌てて袋の中を見ると分厚い本が三冊入っていた。タイトルと見ると『基本忍術の活用の仕方』だの『より良い体造りトレーニング』だの『知ってて安心、咄嗟の使える体術』オレの興味ど真ん中のモノばかりである。
「ひゃっほう!!ツバメせんせーありがとう!!」
目をキラキラさせながら思わず喜びの舞を踊るオレを先生は我が子を見守る親のように見ていた。