第一部

□初忍術はアレでした
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リーン、リーン…。



ビュオっと耳元で風切り音を立てながら枝が視界を掠めて後方へ消えた。しなりの強い枝を更なる推進力へと変えてシゲルは跳ぶ。


目指すは鈴の音を奏でる小鳥さん。

変態ストーカー野郎とオレの中に定着したキバの助言を参考にしてみた。鈴を少し大きめのに変え、意識を捜索から追跡へと…つまり一回一回探すのはやめて見つけた瞬間からその音へと集中した。するとどうだろう、何であんなに悩んでいたのかと思うぐらいに簡単に追跡ができるようになった。

今までは音を必死に追い掛けていたが、今の感覚ではむしろ音に引っ張られているようだ。



(キバもこんなかんじなのかな?)


匂いに引っ張られる?
やべぇ、ますますキバが良くないイメージになっていく…。


リーン、リーン…。



助言を貰って約一ヶ月。
オレは訓練に訓練を重ね、ついにあの小さい鈴の音を小鳥の集団の中でも見付けられるようになった。

目を開けた状態であっても、難なく探し出せる。



重なった枝の隙間を体を捻って通り抜ける、鈴の音が大きくなった。



「!」



ガサガサとすぐ近くの草むらから何かが掛けてくる音がした。間違いない。赤楽と赤陽だ。



リーン、リーン!



赤楽と赤陽も呼んで訓練しているのは理由がある。それはオレが先に見付けないと小鳥さんが大変なことになるから。ぶっちゃけいうとそれもオレの起爆剤のひとつ。小鳥さんは絶対食べさせん!



リーン!!



前方に鈴を持つ小鳥さんを発見した。

既に小鳥さんよりも早いスピードになっているオレは小鳥さんを追い越し様に微笑んだ。


「小鳥さん、みーっけ!」












オレの頭の上で小鳥さんが休息を取っている。ずっと全力飛行をさせてたから疲れたよね、ゆっくりおやすみ。


足元で赤楽と赤陽が拗ねていた。

まさかオレに負けるとは思ってなかったのだろう。残念ながらこれが現実だ、オレだって負けっぱなしはゴメンだからな。


恨めしそうにオレの頭の上を見ている二匹の頭をワシワシと撫でてやる。野生のオオカミの毛は少し固めだが、それでもなで心地は抜群だ。


「修行の手伝いありがとな!お礼に今日とれた猪のお肉やるからさ」



お肉の単語に耳を立てて反応した二匹は嬉しいのかグルグルオレの回りを回り始めた。やめろ赤楽嬉しいのは分かるが体当たりやめろ。
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