第一部
□組み手
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『もーいーかーい?』
「まーだだよー」
はいこんにちは、草木シゲルです。
ただいまカンちゃんと絶賛修行中。
え?修行してるようなセリフじゃないって?そんなことはない。立派な修行である。
修行の名前は『かくれんぼ』と言う超平和な名前だが、内容があれだ。
一定区域内で双方が変化の術で姿を変え、追う方と追われる方に別れて行うのだ。ちなみに追われるのはオレ。
つまり相手の姿も分からないのに逃げなきゃいけないし、化けたモノの天敵からも逃げなきゃいけないから超ハード。心臓ドッキドキ。
「もーいーよー」
言いながらも移動の足は止めない。何もないのに変に動きを止めてしまうと不自然になり、バレてしまう。そう、これは自然と同化する修行なのだ。
あくまでも、自然に。違和感なく動く…。
あ、美味そうな果物発見。
辺りを警戒しながら果物を貪る。小さく変化してると果物沢山食べられて得した気分になる。
「…」
なんか、視線を感じる。
キョロキョロ辺りを見回しても何も見えないが、確実に何かがオレを見てる。
カンちゃんだろうか?
それにしては視線が突き刺さる。
何となく背筋がゾワゾワと粟立って、遥か上空から何かの羽音が凄い速さで接近してくるのを、変化の術で更に感覚が鋭くなった耳が捕らえた。
凄まじい殺気を感じて体が強張る。
まずい、これカンちゃんじゃない。
逃げ出そうとする本能に任せて地を駆ける。何処か、身を隠せる安全な場所は…ッ!
「ッ!!?」
視界の隅に映る鋭い鉤爪。巨大な鳥がオレを捕まえようと迫ってきた。