§其の壱§

□“水の妖精”
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「グレイ様、これ見てください♪」

ある晴れた日の昼下がり。
グレイは、昨日行った仕事で疲れていたのか、
ギルドで昼食を済ませると、そのテーブルでうつらうつらしていた。

そこへ、ジュビアが嬉しそうに走ってきた。
その両手は、水の入った小さなガラスの器を大事そうに持っている。

「何だ、それ」

よく見ると、小さな器の中には、とても小さな深い青色をした魚が一匹。
鱗が陽の光に反射し、七色に輝いて見える。

「きんぎょ?」

「違います。これは、“水の妖精”っていう種類のお魚だそうです」
ジュビアは、ふふっと嬉しそうに笑っている。
「なんでも、ある時期になると体の色が変わるんだとか…
それを最初に見つけた人が、その時にお願い事をすると叶うんだそうです。
でも、体の色が変わる時期は決まってないらしくて…」

「へぇ」

「だから、ジュビア、このお魚を飼って素敵な事を
お願いしようと思いまして」

「どうせ、またくだらない事だろ」
グレイは、呆れてそう言った。

「で、その魚、どこで捕まえたんだ?」

「リオン様に頂きました♪」
「!」

グレイの顔つきが変わった事に、
ジュビアはまったく気が付かずに話を続けている。

「なんでも、北の森のその奥に生息しているって…えっ?」
グレイは、その魚の入った器を掴むと、
スタスタとギルドを出て行こうとしている。
すぐさまジュビアが追いかけた。

「グレイ様、どうするんですか?」
「捨ててくる」
「なんで??」
「得体が知れないからだろ。北の森なんて、魔物が居るところじゃねぇか!」
それに…と言葉を続けようとして、グレイはその言葉を飲み込んだ。

「兎に角、捨てないにしてもリオンに返す!」
「嫌です!そのお魚は、ジュビアが貰ったんです。ジュビアが飼います!」
「じゃぁ、オレが飼う!それなら文句ねぇだろ」
「…まさかグレイ様、リオン様のことが好きなんじゃ…
だからジュビアに嫉妬?!」

「…その妄想癖、早く直せ。
オレは、家に帰る!」
「駄目です!グレイ様がお仕事の時は面倒見れないじゃないですか!?」
「それは、お前も同じだろう!大体、リオンから貰ったものに
なんでそんなに食い下がるんだ!」

「だって…」
“グレイ様とキス出来ますようにってお願いしたいんです”
ジュビアは蚊の鳴くような声でそう言うと、
みるみるその眼に涙を溜めていく。
その声はあまりに小さく、グレイには聞こえない。

「グレイ」
振り向くと、ミラがにっこり笑っていた。
「ギルドを壊さないでね♪」

「わぁったよ!来いっ!!」
グレイはそう言うと、器を持っていない方の手でジュビアの手首を掴み、
そのまま外に連れ出した。

向かった先は、ギルドの裏手。小さな池があった。

「ここならどっちかが仕事でも餌やれるし、
みんなもいるから頼めば様子も見てもらえるだろ。
それで良いな?」

ジュビアは、まだ納得出来ないようだったが、
少しべそをかきながら、こくんと頷いた。

小さな器から池へと放たれた青い魚は、まるで大きな海を知ったかのように
悠々と池の中を泳ぎまわっている。

「グレイ様がこんなにお魚好きとは知りませんでした…」
「だから、その妄想どうにかしろよ。
…とりあえず、魚の餌でも買いに行くか?」

グレイのその申し出に、ジュビアは瞬時にぱぁっと顔を明るくすると、
「はい!」
と嬉しそうに答えた。




やってしまいました(汗)
自分のサイト名で、お話作ってしまいました。
すみません。。
でも、このサイトの絵を考えた時、
金魚の絵が凄く可愛くて、それで“水の妖精”って
思いついたくらい、このサイト表紙の絵には思い入れがあるので、
まぁ、いっかと開き直りました!
お話は、ただ単にグレイ様が嫉妬してるだけです。
ジュビアがリオンから貰ったお魚を毎日大事に世話するのを
想像しただけで、嫌だったんです。
もぅ、グレイ様ったら(笑)相変わらず…

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