§其の弐§

□Dear My friends
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寒い冬の日。
久し振りに晴れた今日は、日差しが暖かく風も柔らかくて、
外の空気も心なしか和やかに感じられる。

ペアでクエストをこなしたせいか、
思ったよりも早く仕事を終えたジュビアとガジルは
まだ陽が高いにも関わらず、ギルドへと帰路についていた。

「ガジル君。今日のクエスト、あのタイミングで
ガジル君の魔法を使う必要は無かったと思います」
さっきから、真剣に今日の反省点をしゃべるジュビアに、
“やれやれ…”
ガジルは正直、辟易していた。

ジュビアとペアで仕事に行く事に抵抗も変なストレスも無い。
むしろ、お互いの魔法の質・タイミング・
魔力・体力を知っている間柄としては、この上ないペアだ。だが…
最近は、やたらとジュビアからの駄目出しが出る。
しかも“反省会”と称して…

そして、最後には必ず
「あぁ、これがグレイ様となら、もっとピッタリ息が合っているのに…」


…これだ。

「あっ、別にガジル君を非難している訳ではないんです。
ただ、グレイ様とクエストに行けたら、どんなに良いか…」

フォローになってねぇ…

「でも、いつも“チームが違うだろ!”って断られてしまうんです。」
そう言って、ジュビアは少し悲しそうに瞳を伏せる。

“本当にやれやれだ…”

ガジルは軽くため息をつくと、
「そんなに言うんだったら、あっちのチームに入れて貰えばいいじゃねぇか!
ウェンディやシャルルも入ってんだろ?」
そう言って、ジュビアを睨む。

「だってぇ〜」
ジュビアは、指を弄びながら口をへの字に曲げ、泣きそうになりながら、
「あちらは、最強チームって言われてるし、ジュビアが行きたいのは
グレイ様とであって、他の方達はどうでも良いし…」
特に恋敵なんかとは、絶対一緒に行きたくないし!
と、ぶつぶつ小声でしゃべっている。

「お前の頭ん中、どんだけ変態野郎で占めてんだ!
一度見せてみろ、その頭ん中!!」
ガジルはそう吼えると、両手でジュビアの頭を掴む。
「ちょっと、やめてください!ガジル君!!
髪が乱れます!!」
ジュビアはそう言って、ガジルの手を払うと、う〜っと睨み返した。

「まったく、やってらんねぇぜ!
あんな変態氷野郎のどこがそんなに良いんだ!!」
「ガジル君!」
ガジルがそう叫ぶと、ジュビアの声色が変わる。
「いくら、ガジル君でも言って良い事と悪い事があります!
グレイ様を侮辱すると、許しませんよ!!」
先程のクエストで魔力を消耗しているにも関わらず、
ジュビアの全身から、ゆらりと青い陽炎が湧き上がる。
全身から放たれるその魔力は、
ジュビアの華奢な体のどこに存在するのかと思わせる程、
強く、強く、周囲をその力で満たしていく。

こんな時、ガジルはジュビアの底知れない魔力に、
いつも無意識に圧倒されていた。
“普段からこの魔力なら、
確実にフェアリーテイルの最強になれるんじゃねぇか”

ふと、そんな事まで考えたりしてみるが、
ジュビアがそれを望んでる訳ではないので、
あえて口には出さない。

「あぁそうかぃ。悪かった悪かった」
このままジュビアを怒らせてここでバトルを始めても虚しいだけだと
解っているのか、ガジルは適当にジュビアをあしらおうとした。

「ガジル君!感情がこもってません!」

ジュビアはそう言って、少し考え込むと
「…解りました。今度行われるギルドのパーティで、
ガジル君が歌を歌ってくれるなら許します」
と、ガジルの方を向いてにっこり微笑んだ。

「あ?何言ってんだ、てめぇは!」
今度は、ガジルの全身から不気味な影が立ち昇っている。

「ジュビア、知ってますよ♪
この前と違う曲を作っているのを♪“Dear My Friends”でしたっけ?」
ジュビアが珍しく口許に手をあて、悪戯っぽく笑っている。

「!!
なんで、知ってんだ!!てめぇ、何処で見た!!?」
今度は、ガジルが珍しく顔を少し赤くして怒ったように声を荒げた。
「ガジル君がギルドで昼寝をしていた時、偶然床に楽譜が落ちていたんです♪
歌詞を見て、ガジル君らしいなぁって♪」
ジュビアは、そう言うとふわりと笑う。
「前回の“BEST FREIEND”は友達が一人だったけど、
“Dear My Friends”は友達が増えているもの。」
ジュビアの言葉を聞いて、ガジルはそっぽを向く。
 
「フェアリーテイルに入れて、良かったわね♪ガジル君♪」
仲間も増えて、毎日楽しくて、それに…とジュビアは楽しそうに笑った。
「レビィさんとも仲良くなれて♪」

「…さっきから黙って聞いてりゃ、ふざけた事ぬかしやがって!
それになんで、チビが出てくんだ!!」
ガジルのどす黒い影は、今にもジュビアに襲い掛かりそうだが、
ジュビアは、まったく気にしていない。
それどころか、そんなガジルの反応を見て、ますます楽しそうに笑っている。

「あら?ジュビアの読みが外れるわけは無いと思うんだけど…」
そう言ってガジルの方を向いて、楽しそうに小首を傾げる。
てめぇ、下手に出てりゃぁ・・・!!
そう、ガジルが言いかけて、
「そうそうガジル君、今回のスーツは“赤”にしてくださいね♪」
「? 赤?」
以前着た、白いスーツをちゃっかりと用意していたガジルは
拍子抜けした声を出した。
「パーティでは、エルザさんミラさん始め、
皆でお揃いの白いドレスを着ようと言われてるんです♪
白に白では、目立たないでしょ??」

「ドレスは、ちょっとずつデザインが違っていて、
裾や襟元、袖口に白い羽根をあしらうんですよ♪」
ジュビアは、まだしゃべり続けている。
「ガジル君には、赤い羽根をあしらいましょうか?♪
あっ、レビィさんとお揃いの所が良いですね♪」
そう言って、嬉しそうにポンッと手を叩く。

「…てめぇ、やっぱり今、此処でケリつけてやる!!」
ニコニコ微笑むジュビアの隣で、ガジルは恐ろしい程の魔力を高めている。



フェアリーテイルのギルドはもう目の前。

ガジルの只ならぬ気配に、ギルドの窓から外を眺めていた
黒髪の氷使いが慌てて外に飛び出して来た。

そしてこの後、逆上している鉄の滅竜魔導士とその黒髪の氷使いが
やりあう事になるのだが、それは、また別のお話。





今回は、ここで終わりにしました。
きっとこの後は、ギルドからナツやらエルザやら出てきて
大変なバトルになったのでしょうw

ジュビアとガジルをがっつり組ませたお話は、
まだ創っていなかったので、良い機会だしと思って、創ってみました♪
ガジルはFTに入ってから、
なんだかんだで女の子を大事にしてますよねw(過去の教訓かしら?w)
ジュビアには、頭が上がらないしww
それが可愛いと思う所以でしょうか?w
このお話で、気付いた方もいると思いますが、
そうです、ガジルはちゃんとパーティで歌を歌うつもりだったんです♪
ジュビアに言われて恥ずかしくて怒鳴っていただけで、
本気で歌うつもりです♪
ギルドでは、ガジルの歌を嫌がる仲間と
ジュビアのように楽しんでる仲間と両極端ですよねw

まめゆめは、ガジルの歌が好きですw
だって、魂がこもってるから♪←なんのこっちゃw

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