§其の参§

□死者の魂
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もうすぐ夜の帳が降りてくる。
マグノリアの街では街灯が灯り始め、
暗がりの中、地上に煌めく星が一つ、また一つと増えていく。

“…少し遅くなってしまいました”
ジュビアは、急ぎ足でギルドを目指す。
『ジュビア、今日は仕事が終わったら早く帰って来てね♪』
仕事に向かう前に寄ったギルドで、
ミラジェーンにそう言われていたのを思い出す。
今日の仕事は簡単なものだったのだが、
遠い場所だったためこんな時間になってしまった。

『何かあるんですか?』
そう聞いたのだが、ミラはふわりと笑っただけで、
ジュビアの問いに直接答えることはなかった。
“急がなくちゃ”
そんな思いでギルドへの道を急ぐ。


マグノリアの大通りをまっすぐ進めば、
大きな石造りの建物が見えてくる。
まだ真新しい重厚な造りのそれは、
大魔闘演武で優勝した時に
マグノリアの人達からお祝いにと頂いたものだった。
正面には大きなギルドのマークが飾られ、
いつ、誰が帰って来ても良いように
いつもたくさんの灯りが灯っていた。

“?”
その灯りが今日は消されている。
いや、正確にはとても小さな灯りが灯されているだけで、
それが逆に石造りの建物自体を不気味な怪物のように見せていた。
ホールの灯りもすっかり消えている。
誰も居ないのは、遠くからでも誰の眼にも明らかだった。
“どうしたんでしょう?”
胸がどくんっと大きく脈打つと同時に言いようのない不安を抑えきれず、
ジュビアは、ギルドへと走り出していた。


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